読書について
 
 大学時代に、いわゆる人文書を日常的に読む習慣をつけておきましょう。まして、教員になる人がちゃんとした質と量の読書をできないのでは、食材をコンビニからしか仕入れられない料理人みたいなものです。
 
■ 本を読む単位
 すごくおもしろい本に当たればそれは幸運なことですが、いつもいつもおもしろいと感じられる本に当たるとはかぎりません。100%おもしろい本でないと読めないというひとは、結局、ほとんど本を読めなくなるでしょう。ふたたび食べ物のたとえを使えば、絶対に自分の好みにぴったりの味付けだと分かっていないとレストランに入れない人が、なかなか新しいレストランを見つけられないのと一緒です。いろいろ食べてみて、はじめて自分にあったレストランや、思いがけずとても美味しいレストランが見つかるはずなのでは。
 別の言い方をすれば、本の単位は1冊ではないのです。自分の世界を拡げるためには、よさそうな本をまずは5冊くらい読んで、そのなかに1冊「当たり」の本があったらいいのだという風に捉えることです。むだが多いように思うかもしれませんが、これを続けているとしだいに勘が鍛えられ、5冊の内1冊が当たりというペースが2冊、3冊と増えてきて、世界がどんどん拡がっていきます。
 
■ まとめて読む
 おすすめの読書法としては、ひとつのテーマについて、まとめて数冊の本を読むことです。たとえば、サッカーの歴史に興味をもったら、関係する本を4冊〜5冊と集めてきて読み進めることです。
 このやり方をとると、それらの本に共通している基本的な知識の部分は、2冊目からは効率よく読み飛ばすことができます。また、同じテーマについて書かれた本なので、それぞれの本の特徴や、見解が食いちがっている議論の焦点がよく見えてきます。たまたま手にとったある本の見解を、そのまま鵜のみにしてしまう危険も低くなるでしょう。
 
■ 読むペース
 読むペースは、本の内容によって異なります。内容が安い本であれば、1時間に数冊読むことも可能でしょう。重厚な哲学書であれば、毎日読み進んで何ヶ月もかかるかもしれません。これに応じて、必然的に、数冊の本を平行して読んでいくことになります。大学の授業だって、半期ごとに複数の講義を平行して受講してますね。そのうち内容を忘れてしまったり、読みさしのまま終わってしまっては困りますが、それも実際にはよくあるかも?
 
■ ノートの取り方
 読書ノートの取り方も、本の内容と読む意図にしたがって、いろいろなしかたがあります。一番簡便なのは、線を引いたり、本に書き込みをすることかもしれませんが、図書館の本ではできない方法ですね。
 個人的なしかたを含めて、試しに挙げてみると、次のようなノートの取り方があります。
 
(1)1冊ごとにノートを取る
・その本の中心的主張の要約をしておく。その要約の分量は1文程度の簡単なものから、ノート1枚分以上の要約までがありうる。
・目次を書き出しておいたり、節ごと・章ごとの要約をしておくのも有益。
・自分にとっておもしかった箇所を抜き書きしておく。
・自分にとっておもしろかった内容を要約しておく。
・読みながらおもった自分の意見や見解を記しておく。
 
(2)複数の本についてノートを取る
・特定のテーマについて、抜き書きや要約を貯える。たとえば、「島根大学」というテーマに関連する箇所が出てきたら、そこを抜き書きしておく。
・特定のテーマについて、複数の本を読んで参照した上で、ひとつの文章にまとめておく。
 
■ 参考書
 より具体的な読書のしかたについては、苅谷剛彦『知的複眼思考法』(講談社+α文庫、2002年)をお薦めします。すこし硬めですが、M.J.アドラー、C.V.ドーレン『本を読む本』(講談社学術文庫、1997年)も参考になるでしょう。
 
[Jan/2014]

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