マックス・ヴェーバーを読みはじめる
 
社会学について学びたいとおもって入門書なんかをみると、必ず「マックス・ヴェーバーというひとが近代社会学の父祖なんよ…」云々と書いてあるんでしょうね。よく、ヴェーバーを知るにはどうしたらいいのか、という質問を受けることがあります。私はヴェーバーの専門家ではないですし、あまり研究史もフォローしてないんですが、入門によく薦めている本を紹介しておきます(ほかにもよい本を知っている人は、ぜひお教え下さい)。
 
 【ヴェーバー自身の著作】
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(大塚久雄訳、岩波文庫、1989年)
1904-05年初出、増補改訂されたものが1920年『宗教社会学論集』に収録されました。注をとばすと半分くらいの分量になるので、一度目は本文だけ読んで流れをつかむという手もあるかと。
『職業としての学問』(尾高邦雄訳、岩波文庫、改訳版1980年)
『職業としての政治』(脇圭平訳、岩波文庫、1980年)
『学問』は1917年の、『政治』は1919年の講演。短いのでまあまず読んだらいいとおもいます。
『宗教社会学論選』(大塚久雄・生松敬三訳、みすず書房、1972年)
『宗教社会学論集』(1920-21年)から考察部分を抜き出したもの。ひとによっては、ここに収められている「中間考察」こそがヴェーバーの思想のエッセンスだ、と言うひともいます。そこまで言わなくても、重要なことは確かなので。
 
 【理解を助ける本】
大塚久雄『社会科学における人間』(岩波新書、1977年)
やっぱり分かりやすさという意味ではこの本では。私の場合は、山之内靖『マックス・ヴェーバー入門』(岩波新書、1997年)はあまりに斜めから入りすぎているという理由で、牧野雅彦『マックス・ウェーバー入門』(平凡社新書、2006年)は思想史に寄っていてとっつきにくいという理由で、入門書としては薦めていません。
[2011/8追記、牧野氏の場合、新著『新書で名著をモノにする・『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』』(光文社新書、2011年)がいいですね。初心者じゃなくても、勉強になる点が多いです]
S.ヒューズ『意識と社会−ヨーロッパ社会思想 1890-1930』(生松敬三・荒川幾男訳、みすず書房、1970年、原著1958年)
ヴェーバーを中心に据えた社会思想史。厳密には入門書ではないでしょうけど、ヴェーバー理解には役立つかと。
向井守「ウェーバー−神議論をめぐって」(寺崎俊輔ほか編『正義論の諸相』、法律文化社、1989年)
M.メルロ=ポンティ「悟性の危機」(滝浦静雄ほか訳『弁証法の冒険』、みすず書房、1972年、原著1955年)
メルロ=ポンティの論考の方は、『メルロ=ポンティ・コレクション』の第七巻にも入っているもよう(みすず書房、2002年)。
 
 【そのほか関連書】
マリアンネ・ウェーバー『マックス・ウェーバー』(大久保和郎訳、みすず書房、1963-65年、原著1950年)
ヴェーバーの伝記にはひょっとすると「はまってしまう」魔力あり。ミッツマンの『鉄の檻』だとか。羽入さんのは読んだことがないんですが。
G.アブラモフスキー『マックス・ウェーバー入門』(松代和郎訳、創文社、1983年、原著1966年)
 
T.パーソンズ『社会的行為の構造』(稲上毅ほか訳、木鐸社、1974-1989年、原著1937年)
社会学理論にある程度興味があればですが、『社会体系論』がダメなひとでもこれは読んでおいた方がいい。
浜井修『ウェーバーの社会哲学』(東京大学出版会、1982年)
牧野雅彦『責任倫理の系譜学』(日本評論社、2000年)
 
R.ベラー『徳川時代の宗教』(池田昭訳、岩波文庫、1996年、原著1957年)
安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』(青木書店、1974年)
P.ブルデュー『資本主義のハビトゥス−アルジェリアの矛盾』(藤原書店、1993年)
 
下の3冊は、ヴェーバーの批判的継承の試みとして挙げてみました。
社会科学方法論の話、あるいは歴史哲学の話をしはじめると、また別のセレクションになりますが、今回はこのへんで。世間一般の基準からすると「チョイスがふるい」と言われそうなラインアップですが、私の場合はこんなかんじです。しかし、昔読んだはず本の内容を本気で忘れているのでちょっと焦る、とは個人的な感想。 [Apr/2011]

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