自殺について?
 
 「いのちの電話」に関する仕事をいただいたもので、少し関連書を読みました。でも、自殺の問題はむずかしいな、ということが分かっただけでした。(うつの問題はそれとしてちょこちょこ勉強したことがありますが、そちらはまた別の機会にでも。)
 
 具体的な書名は避けますが、数冊手に取った「いのちの電話」関係の書籍はどれもあまりおもしろくなかったですね、「いのちの電話」活動の紹介パンフレットのような感じを受けました。念のため言い加えておくと、「いのちの電話」の活動自体の価値がどうこうという話ではありません。単純にプライバシーの保護の観点からして具体的な事例の話ができないということや、対応の方法などについて一般的な議論をしたりマニュアル化するのが難しい活動なのだと思います。
 
 唯一、ダイアン・アッカーマン『いのちの電話−絶望の淵で見た希望の光』(二階堂行彦訳、清流出版、2004年)は、分量はけっこうありますが、エッセイののりで読みやすかったです。ただ、この本の「主人公」が語る思想や蘊蓄、特に生物学的決定論みたいところはどうにも怪しいので、「いのちの電話」の雰囲気がわかる読み物として読むべきでしょう。
 
 もう少し手を拡げて、本橋豊『自殺が減ったまち−秋田県の挑戦』(岩波書店、2006年)という本の場合は、自殺を単に個人の心理的問題として捉えてないところが参考になります。でも、なにか特別な特効薬が示されているっていうようなものでもなくて、むしろ地道な活動の紹介です。
 
 また、文化論になってしまいますが、最近モーリス・パンゲの『自死の日本史』が講談社学術文庫で再版になっていたのでついでに読みましたが、私にはなんだかピンと来なかったですね。うーん。脱線ついでに言えば、デュルケームの『自殺論』ももちろんおもしろいんですが、マリノフスキーが書いていた「抗議としての自殺」の話がなんだか記憶に残っていますね。たしか『未開社会における犯罪と慣習』ではなかったろうか。とまあ、ともあれなんだかしょうもない書籍紹介となりました。
 
[Oct/2011]

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