ゼミなどで卒論に向けて作業する際、先行研究にあたるよう、くり返し言われますが、書籍だけを探しているのでも不足です。
それはどうしてか。雑誌論文にあたるべき理由その一として、もっとも最新の研究はまず、学術雑誌に論文として発表されるからです。
それから、「卒論を書く」という意味ではもっと重要かもしれないのは、理由その二です。それは、学術雑誌の論文は、学生のみなさんが実際に卒論を書く際のよいモデルになるということです。書籍はスタイルが一定してないので、真似するのが難しいものがあります。「着眼」・「分析の方法」・「論の組み立て」といった点で、卒論のモデルにできるような論文を見つけられれば、その後の作業がずっとスムーズに進むことまちがいなしです。
■「講座」・「叢書」にあたる
厳密には「雑誌論文」ではありませんが、以下のシリーズについては一度は手にとって、気になる論文には目を通しておきましょう。書籍も含め、それらの論文に引用されている文献からチェックしていくと効率よし。
『岩波講座 現代社会学』(全26巻+別巻、岩波書店、1995-97年)
『講座社会学』(全16巻、東京大学出版会、1998-2002年)
『リーディングス 日本の社会学』(全20巻、東京大学出版会、1984-97年)
『社会学のアクチュアリティ』(全12巻+別巻2、東信堂、2004年-)
ほかにも、もうちょっと限定されたテーマでコンパクトな講座本がいろいろありますので、それぞれテーマに応じてチェックしておいてください。
■ 検索する
CiNii まずはこれですね、CiNii。今はPDFファイルで直接読める論文も多いです。
J-Stage 社会学分野ではまだ CiNii の方が強い印象ですが、必ずこちらにも当たっておく必要があります。
国立国会図書館・雑誌記事検索 学術雑誌以外の雑誌も含まれます。
社会学文献情報データベース 入り口がいくつかあるようですので、紹介ページにリンクしておきます。
日本民俗学文献目録データベース 歴博が運営。近隣の学問分野で、一番使いそうなものだけ貼ってみました。
以上はウェブサービスですが、図書館に足を運び、実際に『社会学評論』や『ソシオロゴス』といった紙媒体の雑誌を手に取ってみるとまた発見があります。
■ 芋づる式に!
以上の手順は、当然のように進めておいてもらわねばなりませんが(手をつけてないとかは単なるサボリ)、この検索手順は手はじめにすぎません。
つまり、
手はじめにみつけた論文や本を読み、今度はそこで引用されている、重要そうな論文や本をチェックしていくことが必要です。
そして、またそのチェックした論文や本の中に引用されている重要そうな論文や本を・・・というふうに、「芋づる式」に論文を探していくことです。
この作業は延々と続くというわけではなく、何段階か続けていると、なんとなく「このテーマに関しては、この辺を押さえておくべきなのだな」というまとまりも見えてきます。たとえば、「ニート」というテーマに関して論文を探したとき、その論文の多くに引用されている論文や本は、「ニート」についてきっと読んでおくべき文献なのだろうという見込みが立ちます。
ジャンルを問わず、こうした「芋づる式論文探索作業」をせずに、パソコンでキーワード検索しただけで作った文献表はすぐにそれと分かりますよ。
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[Apr/2012]