副題「TOKYO 2020-2021」、光文社新書、2021年。コロナ対応の現場組最前線ともいうべき、東京都の保健所で働いた、もしくは戦った公衆衛生医師による記録。ぜんぜん医療とかの関係者じゃない僕も、当時の社会全体の空気感をフラッシュバックのように思い出してクラクラする。

はじめに――ミッション・インポッシブル(もしくは、闘う公衆衛生医師)――
プロローグ 1月23日深夜から東京は戦争状態に突入した
第1章  第1波 2020年1月から6月まで
 1月 人手不足にまつわるエトセトラ
 2月 あなたは検査の対象ではありません
 3月 病院が見つかりません!
 4月 宿泊療養始めます
 5月 おまえの区では何人患者が出てるんだ!
 6月 何を根拠に?
第2章 第2波 7月から11月まで
 7月 「夜の街」って何だ
 8月 COCOAなんて大嫌い
 9月 インフルエンザとの同時流行を踏まえた対応
 10月 住民接種、本当にやるんですか?
 11月 言葉が通じません……
第3章 第3波 12月から2021年3月まで
 12月 どうか課長を眠らせてあげてください……
 1月 縮小ではありません!
 2月 嘘をついたら30万円、病院から逃げたら50万円
 3月 そして誰もいなくなった
第4章 第4波・第5波 4月から現在
 4月 天国に違いない
 5月 常識的に考えて……
 6月 検証してみた。
 7月 開催までの短距離走
 8月 最後の聖戦
 9月 トンネルの向こう側
最終章 残された課題
 1.現実的な課題
 2.より大きい視野で検討すべき課題
 3.結局はマネジメント――都レベルでの課題
 4.古くて新しい保健所のこれから
巻末特別対談「病院から見たコロナ、保健所から見たコロナ」
大曲貴夫(国立国際医療研究センター病院)×関なおみ
あとがき――叶えられた祈り――

風評被害やそれを恐れる心理、押しよせる電話や問い合わせ、毎日の陽性者の全数報告やマスコミ対応のための仕事(そういや、島根県でもYouTubeで感染者ひとりひとりについて説明する記者会見を毎日開催していたな・・・・・・)、ワクチンに関するあれこれの対応、COCOAのような新しいシステムの導入、そんなところにもって、東京オリンピックの延期やら開催やら・・・・・・。

戦争において戦闘能力以上に兵站や補給が大事、ということに似て、感染症や患者そのもの以上に、それ以外の人々の行動や仕事のしくみが決定的に重要だということがわかる。

トータルでみると、おそらく日本社会はうまく乗りきった方で、しかしそれは責任感ある人たちの「火事場の馬鹿力」のおかげであろうと思う。今回の教訓を踏まえてきちんとシステムを整えておかないと、人も余裕もすり減っていくばかりで、次はこうはいかない。日本社会と言えばずっと、そんなことばかり多いわけだから。

[J0508/240903]