Month: November 2024

石塚尊俊『暮らしの歴史』

ワン・ライン、2005年。あちこちでの書きものを集めたもの、一部は未発表原稿。

暮らしの歴史
 1 暮らしの歴史
 2 地方にいて思う民俗学の過去将来
 3 民俗誌と民俗史
半世紀前の採訪記
 1 山陰ところどころ
 2 東北と山陰
 3 薩南と山陰
今は昔の民俗誌
 1 吉賀奥蔵木村民俗誌
 2 平田市佐香地方民俗誌
 3 大根島・江島民俗誌
 4 隠岐島前・島後民俗誌
調査報告三題
 1 山陰における藤布の技術伝承
 2 出雲平野の農具と農法
 3 山陰海岸の刳舟
問題解説
 1 常民と常民性
 2 年頭に来臨する神
 3 イエの神とムラの神
 4 ハレとケ再考
 5 皇居前祈念・記帳のこと
 6 七十五という数
人と本〔馬庭克吉・大庭良美・奥原國男・谷川健一・戸井田道三・岡義重・橋浦泰男・坪井洋文〕

 「暮らしの歴史」では、中国地方の集落を対象に、家の本末関係の繋がりで、集落の全戸数を割るという数量的な分析の実験を行っている。
 「そうすると、なんと、美作・備前・備中では平均が2.0以上、因幡・伯耆・出雲・備後および隠岐では1.5ないし1.9、石見・安芸以西では1.4以下ということになったのです。これはまさしくさきの宗旨の違いと一致するものでした。すなわち同族の膨張度が高い所では密教が多く、中間の所で禅宗、低い所では真宗が盛んだということになってくるわけです。これはとうてい偶然の一致とは思われません。つまり、同族で固まる要素の多い所では、何か新風が入ってきて、それが便利でよいとわかっていてもなかなか改革に踏み切れない。ことに同族祭祀、先祖祭りというようなことに直接かかわる問題となるとなおのことでしょう。」(48-49)
 同族組織という条件が原因なのか結果なのか、両方あるとおもうが、試みとしては興味深い。

未発表原稿「吉賀奥蔵木村民俗誌」から。
「昔は入村者があると、庄屋が判定して空家に住まわせたが、その場合、入村者はいままでの姓を棄て、前任者の姓を名告るならわしだった。金山谷の安村氏も岩本姓で入ってきたが、安村の空家に入ったので安村に改めたといっている。もちろん維新以前の話である。入村手続としては、庚申の晩に二升も買う程度でよかったが、以後村仕事のあるような時には必ずまじめに働かねばならない。そうすると入会山にも勝手に入ってよかった」(109)。

おもしろい。山口弥一郎が報告している、津波のあとの家の復興の話を想起させる。墓や位牌の継承まではどうなっているか、わからないが。

そのほかあれこれ。旧平田市の小伊津と三浦の灘方では、コヤドとよばれる若者宿が昭和35年時点でも存続していた。大根島の薬用人参は明治20~30年代が全盛期で、一時期養蚕に押されたが、戦後はふたたび盛んになった。島後のシャアラ船は、だんだん派手になった。出雲平野の有名な高畝耕作「田麦掘り」は、じつは日本各地に存在した。

柳田國男の常民概念について。
「農民の場合のみをとってみても、明治初年にはもちろん、柳田翁が若くして自ら歩いていられた時代にはまだ全国民の80~70パーセントが農民であった。しかもその大半はまだ学問や理論とは無縁の存在であって、文字通り目に一丁字ない者さえ稀ではなかった。常民という語が使い出されたのはまさにそういう時代であった。だからそこには、この語を階層概念と考えるか文化概念と考えるかなどということは問題にならなかった。「常民」はまさに実態だったのである。ところが、今日ではその実態が大きく変わってしまった。」(322)

[J0542/241127]

石塚尊俊『日本の民俗32 島根』

1973年、第一法規。

死に関するところを二、三メモ。

「葬式のしかたも大きく変わってきた。・・・・・・交際の範囲が広くなると、弔問者もまた多くなるが、そのかわり本当に悲しくないものまで集まるようになった」(225)。

「死の隠語: 死ぬことを出雲では「広島へ綿買いに行く」といい、石見の西部では「広島へお茶買いに行く」といった。もうこのことばを知っているものも少ない」(226)。
>関連文献
柳田國男「広島へ煙草買ひに」https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/58776_78002.html
小口千明「忌言葉「ヒロシマへ行く」にみる他界の認識像とその変化」
https://dl.ndl.go.jp/pid/13328544/1/107

「トンジンバナシ:死後、その人の声を聞くために霊寄せをするということも、昔は多かった。霊寄せのことを出雲ではトンジンバナシといい、隠岐の島前ではトウジヲウツという。トウジ・トンジンは刀自、つまり老女を意味する語のなまりである」(232)。

本書自体も、国立国会図書館デジタルコレクションでも閲覧可(要登録)。https://dl.ndl.go.jp/pid/12283337

[J0541/241125]

『柳田國男全集』(筑摩書房)総目次

文庫版全集については、詳細な総目次をつくってくださっている方がおられる。http://kenkyuyoroku.blog84.fc2.com/blog-entry-1025.html
http://blog.livedoor.jp/a30a988/archives/52354025.html

が、新しい全集版はどうも一覧すらみあたらないので、もう、作った。
暫定的なもの、さしあたり。

1: 産業組合/農政学/農業政策学/後狩詞記/石神問答
2: 遠野物語/時代ト農政/山島民譚集
3: 赤子塚の話/神を助けた話/郷土誌論/祭礼と世間/海南小記/日本農民史/山の人生/雪国の春
4: 青年と学問/都市と農村/日本神話伝説集/民謡の今と昔
5: 日本昔話集/蝸牛考/明治大正史世相篇
6: 秋風帖/女性と民間伝承/桃太郎の誕生
7: 地名の話その他/小さき者の声/退読書歴/一目小僧その他
8: 民間伝承論/郷土生活の研究法/地名の研究/山の神とヲコゼ
9: 信州随筆/国語史新語篇/昔話と文学/New Year Dreams/木綿以前の事
10: 稗の未来/国語の将来/孤猿随筆/食物と心臓
11: 民謡覚書/妹の力/伝説
12: 野草雑記/野鳥雑記/豆の葉と太陽/こども風土記/菅江真澄
13: 方言覚書/木思石語/日本の祭/昔話覚書
14: 神道と民俗学/国史と民俗学/史料としての伝説/火の昔/村と学童/母の手毬歌
15: 先祖の話/笑の本願/毎日の言葉/物語と語り物/家閑談
16: 新国学談 第1冊 祭日考/新国学談 第2冊 山宮考/新国学談 第3冊 氏神と氏子/口承文芸史考
17: 俳諧評釈/西は何方/村のすがた/婚姻の話
18: 北国紀行/年中行事/北小浦民俗誌/標準語と方言/老読書歴
19: 方言と昔他/大白神考/島の人生/東国古道記/なぞとことわざ/神樹篇/不幸なる芸術
20: 月曜通信/新たなる太陽/妖怪談義/少年と国語/炭焼日記
21: 故郷七十年/海上の道
22: 〔総集編〕校訂近世奇談全集/萩の古枝/南方二書/おとら狐の話/炉辺叢書解題/郷土会記録/来目路の橋 真澄遊覧記/伊那の中路 真澄遊覧記/わがこゝろ 真澄遊覧記/奥の手ぶり 真澄遊覧記〔ほか〕
23: 〔作品・論考編 明治22~43年〕五色の歌よみけり中に黒を/野遊/雲雀/秋元安民伝/地(丙賞)/をりにふれたる/むさゝび/桂園叢話/をりにふれたる/銭塘蘇小々更値一年秋といへる詩のこゝろを〔ほか〕
24: 〔作品・論考編 明治44年~〕生石伝説/木地屋物語/踊の今と昔/子安の石像/「イタカ」及び「サンカ」/越前万歳のこと/二たび越前万歳に就きて/掛神の信仰に就て/地方見聞集/塚と森の話〔ほか〕
25: 〔作品・論考編 大正6年~〕獅子舞考/甲賀三郎/諸国の片葉の蘆/大礼の後/神社と宗教/所謂記念事業/旧式の新著/耳塚の由来に就て/蛙の居らぬ池/編者申す〔鹿島増蔵「家筋と作物禁忌」に〕〔ほか〕
26: 〔作品・論考編 大正11年~〕Dear Mr.Rappard/国際聯盟の発達/将来のチョコレート/第三十五回同人小集記/賽の河原の話/琉球の地蔵に就て/第三十六回同人小集記/春の武蔵野横断/SECOND MEETING/TWELFTH MEETING〔ほか〕
27: 〔作品・論考編 大正15年~〕村雑話/編輯者より/南部叢書刊行の計画/紀州粉河の観音堂/慶すべき新傾向/新年号の誤植/保健学者に一言/家計調査/抱負か空談か/「むかしばなし」の面白さ〔ほか〕
28: 〔作品・論考編 昭和4年~〕郷土館と農民生活の諸問題/諸国さへの神祭記事/編者云〔小池直太郎「串柿を詠じた唄」に〕/編者云〔安成三郎「道祖神の唄」に〕/新しき生産へ/蛇聟入譚/土木行政の情弊現はる/陰性政治の末路/婦人運動の一転回期/田中外交と弊原外交〔ほか〕
29: 〔作品・論考編 昭和8年~〕民俗採集と言葉/農村語彙・序/おかちん三題/常民婚姻史料・緒言/年中行事調査標目・緒言・後記/我々の求むるもの/序・「種子島方言集」故鮫島松下/国学院大学方言学会/故人寄贈の桜悲し/喜談小品〔ほか〕
30: 〔作品・論考編 昭和12年~〕越中と民俗/神奈川県と民間伝承/山茶花のことから/木曜会/梅紅白/幼言葉分類の試み(二)/童神論/木曜会/広島へ煙草買ひに/木曜会〔ほか〕
31: 〔作品・論考編 昭和18年~〕手拭沿革一〜四/木曜会/江戸の松飾/編輯後記/出版界新編成への期待/HISTORIETTE OF JAPANESE FESTIVALS/朗読文学のために/教育と国語国策一〜三/白秋さんと小鳥/菅江真澄のこと/婚姻の歴史/美と民族学/歴史学と民俗学/沖縄文化聯盟の為に/処女会の話/昔の旅これからの旅/民家史について/垣内の研究など〔ほか〕
32: 〔作品・論考編 昭和25年~〕新春閑話/銘苅正太郎翁の話—伊是名島の葬制/この頃の民間伝承には/迷信の実態/お歯黒と白い馬/談話会/村の信仰/臼の歴史/鴉の悪意/田植の夢/千代田文庫の思い出/史論・抄物/南方熊楠について/日本語の造語力/海上生活の話/桂園派との関係/耳の国文学/わがとこよびと/信仰と民俗〔ほか〕
33: 〔作品・論考編 昭和30~37年〕便り/今までの日本語/歌会始の儀/七万の“知られざる日本語”/二つの精進/海上移住の話/郷土研究と東筑摩教育会の思い出/貴重な三年間/国語教育の進むべき道/柳田国男氏の国語研究所への祝辞/田山のこと/神道史の一問題/米と日本人/入墨の話/折口君の学問/日本における内と外の観念/俳談/柳翁閑談〔ほか〕
34: 〔作品・論考編 昭和38~62年〕
35: 〔作品・論考編 平成2~27年〕
別巻1: 柳田国男年譜/松岡家系図/柳田家系図/主要参考文献
別巻2: 補遺

[J0540/241124]