左右社、2018年。放送大学叢書というシリーズの一冊で、もともと2006年に出版された放送大学の教科書を改訂したもの。

1 アメリカと日本の「静かな革命」
2 労働経済理論とその見落とし
3 ジェンダー革命と出生率の回復
4 なぜ女性は仕事を辞めるのか
5 男女格差のメカニズム
6 転職しづらい日本の労働市場
7 教育と女性の就業
8 企業の法対応の功罪
9 非正規労働と女性の貧困
10 男性へと拡がる格差
11 意識の壁に挑む
12 ダイバーシティ&インクルージョン

「ジェンダー革命」論の文脈。「これらの研究成果から出生率の低下は、男性は稼ぎ主であり、女性はケアの主な担い手という社会から、男性も女性も仕事と家事を分担する男女平等社会への移行期に起きた現象と解釈される」(50)。

「従来、女性が活躍できない原因は女性側にあると考えられてきた。たとえば女性は勤続年数が短く、結婚や出産で仕事を辞める人が多い、というように。しかしここまでみた通り、男女間の昇進や賃金における格差は複合的な要因によって生じている。仕事の割り振りの男女差、昇進のスピードの差、長時間労働、短時間勤務制度がもたらす能力開発への負の影響などである。女性の側に要因があるわけではないのだ」(93)。

男女雇用機会均等法の効果。「女性社員の育成のためには、職場での男女差別をなくし(均等政策)、同時に仕事と育児が両立できる環境を整えるという両方の政策を行うことが重要なのだが、90年代後半になると、企業の女性支援策は両立支援にシフトし、均等の視点が弱くなっていくのである」(128-129)。

配偶者控除の103万円の壁、社会保険料の130万円の壁。「2010年に実施された労働政策研修・研究機構の「短時間労働者実態調査」によると、非課税限度額である年収103万円を超えそうになった場合に、就労調整を考慮すると回答している人は25%にのぼる。4人に1人が就労調整をして労働時間を調整している。そうであれば、人手不足になっても雇い主は賃金を上げるインセンティブをもたない。挙げると就労調整をする人が増えるだけだからだ。そのためにこの制度によって、パート全体の賃金は9%程度押し下げられている推計されている」(155)。

「エッセイスト酒井順子は著書『男尊女子』(2017)の中で、日本は女性がリーダーシップを取りたがらないだけでなく、女性が自ら一歩引いて生きることを選択している「男尊女子」社会だと説いている」(182)。

[J0516/240928]