岩波新書、2024年。なるほど、ロジックの多様性を整理した本だが、これは一種の日本人論としても読まれるだろうね。非論理的と叩かれがちな「感想文」の実践であるが、これを実質合理性を志向した「社会領域型」のロジックに基づくものとして、日本社会の社会秩序の形成・維持に貢献していると再評価する。
序章 西洋の思考のパターン:四つの論理
第1章 論理的思考の文化的側面
第2章 「作文の型」と「論理の型」を決める暗黙の規範:四つの領域と四つの論理
第3章 なぜ他者の思考を非論理的だと感じるのか
終章 多元的思考―価値を選び取り豊かに生きる思考法
アメリカで優越する経済領域の論理、フランスで優越する政治領域の論理、日本で優越する社会領域の論理に加えて、イランで優越する法領域の論理というものが考察に入っているところもポイント。
「演繹的な推論は、多くの場合、帰納による裏づけを持っており、私たちを納得させるには経験に基づく帰納が必要であるが、演繹のみで成り立つ推論である。それが法律と神学である。法律と神学は「成文法規」や「聖典」を真である第一原理として持ち、それをもとに様々な事象についての演繹的な推論を行う。三段論法の大前提となる第一原理(真理)を示す書物の存在が、法技術原理の思考とその表現法を特徴づける」(98)。
イスラーム法を重視する社会のあり方を理解する上でも、示唆がある。さまざまに考えるヒントを与えてくれる一冊。
[J0572/250305]
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