播磨学研究所編『聖徳太子と播磨』

神戸新聞総合出版センター、2023年。

1 聖徳太子の人物像と太子信仰――東野治之
2 播磨地域の聖徳太子像につい――石川知彦
3 播磨の聖徳太子絵伝――村松加奈子
4 播磨の太子信仰 斑鳩寺と鶴林寺――(鼎談)大谷康文・吉田実盛・小栗栖健治
5 法隆寺領鵤荘の聖徳太子信仰 ―― 田村三千夫
6 鶴林寺と聖徳太子信仰――宮本佳典
7 聖徳太子信仰の展開と特色――吉田一彦
8 播磨の聖徳太子伝説――小栗栖健治
9 聖徳太子のこころ――古谷正覚
10 「鶴林寺太子堂荘厳画」の芸術性の回復――高木かおり

播磨と聖徳太子というテーマの連続講演をもとにした本のようで、体裁はよくある地域のカルチャーセンターの講座的なものだが、最新の学術研究を踏まえた充実の内容にびっくり。勉強になるしおもしろい。聖徳太子ゆかりの寺、斑鳩寺は訪れたけど、鶴林寺にも行きたいなあと思う。

なおこの本は、たつの市龍野町の重要伝統建築物郡保存地区のならびにある、伏見屋商店にて購入。すばらしい建物の本屋さんで、和風なようでいて、吹き抜けの二階立てになっているところはイギリスの書店を思わせるつくり。

[J0608/251007]

林竹二『田中正造の生涯』

講談社現代新書、1976年。

序章 田中正造の遺跡を訪ねて
第1章 政治家田中正造の形成過程
第2章 田中正造の議会の戦い
第3章 谷中村問題
第4章 田中正造の谷中の戦い
第5章 砕けたる天地の間に

戦いに身をなげうっていても、「谷中のことがまるで見えていなかった」田中正造が、しだいに谷中村の人たちの勇気に気づくというビルディングスロマンな筋書き。かなり著者の思い入れの強い評伝ということになるんだろう。

田中正造はキリスト者ではなかったようだが、キリスト教に共感をもっていたようだ。また、「田中正造は、決定的に「日本精神」を否定した。やまとだましいは専制国家の手でつくりあげられた偽道徳で、来るべき政治にとっては「大疵物で一文の値うちもない」」(220)と考えていたらしい。

[J0607/251007]

石黒圭『文系研究者になる』

研究社、2021年。
アマゾンレビューで絶賛されていたので、目を通してみた。で、ちょっとだけメモ。

ここが一番熱かった。
「Q:研究テーマは指導教員に近いものを選んだほうがよいですか」。「A:可能であれば遠いテーマを選んだ方が安全です」。その弊害①指導教員の目が厳しくなる。②指導教員の先行研究を批判しにくい。③指導教員の研究との棲み分けに苦労する。④指導教員の枠内で似た研究を再生産することになる。⑤指導教員の枠外のアプローチが取りにくくなる。・・・・・・理路整然!

なるほどメモ。「コメントを増やす方法」。そのひとつ、発表者は参加者のコメントをもらうために複数のグループをわたりあるくという方法。あるいは、事前に参加者が発表資料に目を通しておくという方法。

ゼミ発表における「価値の低いコメント」の類型。
①不勉強にもとづくコメント:常識的感覚や想像力不足。
②誤解にもとづくコメント:思いこみや読み落とし。
③思慮不足のコメント:その場の思いつきや一面的な見方。
④評論家然としたコメント:代案のない原理的なコメント。

[J0606/250930]