2012年、せりか書房。

1 ポピュラー音楽と資本主義
2 ロックの時代の終焉とポピュラー音楽の産業化
3 ポップの戦術―ポストモダンの時代のポピュラー音楽
4 人種と音楽と資本主義
5 「Jポップ」の時代
6 「ポスト・Jポップ」の風景
7 ムシカ・プラクティカ―実践する音楽

大学での講義テキストとして書かれたものというが、たしかにバランスがよい良書。バランスがよいというのは、音楽本にありがちな、自分自身の趣味にはしるようなこともなく、かといって衒学的でもなくて、まさにテキストとしての役割を果たしている。

前半部分は他の書物でも一応ありそうな概説だが、とくにJポップのところは概観としての精度が高く、あまりほかになさそうに思う。初版が2007年で、この増補版が2012年というので、この間の変化の激しさに驚いた旨が書かれているが、さらにそこから15年、変化は加速していて、もうちょっとしたら1990~2000年頃の音楽シーンのことをリアルに想像ができなくなりそうだ。そう考えると、本書の記述の価値はこれからさらに高くなるかもしれない。求められる音楽批評のスタイルや対象自体もまた変わってしまうだろうけれども。

メモ:黒人文化を語る、ポール・ギルロイ『ブラック・アトランティック』の反-反-本質主義。

[J0574/250322]