副題「データで読み解く所得・家族形成・格差」、中公新書、2024年。
今の話題の本を、眺めてみる。データの読み方など、検証しながら読んではいないので、まずは結果を鵜呑みで。データに基づいた本なので、いずれにしても、今後氷河期世代を論じるときには参照されることになるはず。
序章 就職氷河期世代とは
第1章 労働市場における立ち位置
第2章 氷河期世代の家族形成
第3章 女性の働き方はどう変わったか
第4章 世代内格差や無業者は増加したのか
第5章 地域による影響の違いと地域間移動
終章 セーフティネット拡充と雇用政策の必要性
本書では、1993~1998年卒を「氷河期前期世代」、1999~2004年卒を「氷河期後期世代」と定義している。高卒・大卒の含むのかな。とすると、2024年現在、高卒なら1974~1985生まれで、50歳から39歳。大卒なら1970~1981年生まれで、54歳から43歳ということになるのかな。
本書によれば、就職状況がより悪かったのは「後期」で、しかもその後の世代でもあまり改善しなかったらしい。「氷河期前期世代はそれ以前の売り手市場との激しい落差を経験した世代、氷河期後期世代は雇用の水準そのものがどん底だった世代だ」(9)。ところが2005年卒でもさほど改善されておらず、「本当は06年卒くらいまで就職氷河期世代に含めるべきなのかもしれない」とのこと(10)。
また、たんに就職率だけでなく、その内容にも配慮する必要がある。それは、たんに就職先によって収入の差があるというだけでなく、不本意な就職が多ければ、その後の離職率もまた高くなるからだ。
氷河期世代の就職難が出生率の低下を生んだという見方については、本書はこれをしりぞけていて、氷河期後期世代はむしろ、団塊ジュニア世代よりも40歳までに産む子どもの数は多かったという。少子化の傾向については、就職氷河期の到来といった要因だけでなく、もっと広い視野から捉えなおさねばならないということ。
「就職氷河期世代、特に後期世代が、すぐ上のバブル世代に比べて、卒業後長期にわたって雇用が不安定で年収が低いことは、従来から繰り返し指摘されてきた。これに加えて、氷河期世代より下の世代も、景気回復期とされる2000年代後半に卒業した世代も含めて、雇用が不安定で年収が低いままであることもわかった。90年代からの不景気は、単なる景気循環を超えて、労働市場に構造的な変化をもたらした可能性が高い」(154)。
また、本書が最初に指摘したわけではないと著者もことわりを入れているが、年金制度の「逆進性」がこの世代にとってとくに問題だという話、「ほんそれ」というやつ。「雇用保険をはじめとする社会保険方式のセーフティネットは、過去に保険料を拠出していなければ給付を受けることができず、若年期からずっと雇用が不安定な者にとっての救済策にはなりえない」(162)。
国民年金に関しても、この世代にとってそれを納めることがどれだけたいへんだったか、たいへんか。だから気づくのが遅いのだが、冷静に考えるとやはり腹は立ってくる。この点、参照されているのは酒井正『日本のセーフティネット格差』という本。
あと、本筋とは関係ない話。最近は他の新書でも感じたことがあるが、紙面の上下のブランクが広く、一瞬あれっておもうほど、紙面がスカスカにみえる。屋外の自然光のしたで開くと、とくに。1ページ42字×15行みたいだけど。
[J0528/241030]
Leave a Reply