ちくま新書、2023年。武士、町人、農民、漁民と、江戸時代における働き方を解説。学問として特定の知見を主張するというような主旨の本ではなく、この時代の社会見学へと連れていってくれるような一冊。
第1章 「働き方」と貨幣制度
第2章 武家社会の階層構造と武士の「仕事」
第3章 旗本・御家人の「給与」生活
第4章 「雇用労働」者としての武家奉公人
第5章 専門知識をもつ武士たちの「非正規」登用
第6章 役所で働く武士の「勤務条件」
第7章 町人の「働き方」さまざま
第8章 「史料」に見る江戸の雇用労働者の実態
第9章 大店の奉公人の厳しい労働環境
第10章 雇われて働く女性たち
第11章 雇用労働者をめぐる法制度
第12章 百姓の働き方と「稼ぐ力」
第13章 輸送・土木分野の賃銭労働
第14章 漁業・鉱山業における働き手確保をめぐって
「江戸の町人は、家持・地借(じがり)・店借に分けられる」(127)。
「現代社会においては「不動産を持っているかどうか」という違いは、市民としての権利に何の影響も及ぼさない。だが、江戸時代はそうではない。不動産を持つ家持だけが真の町人であって、さまざまな権利を保障され、その代わりに税的負担の義務を負った」(128)。
「地借は、借地とはいえ自己資金で建物を建てて事業を行っているわけで、それなりに経済力を持っている存在と言える。ただ、家持と異なり不動産たる地所を持たないため「町」の運営に参画することはできず、また、町入用を負担する必要もない。家持よりも町人としての身分は低いことになる」(130)。
「鉱山と同様に、江戸時代段階で雇用労働が集約的に投入された産業として漁業が挙げられる。現在の漁師の大多数は、漁船を持ち、自己裁量で操業する個人事業主である。・・・・・・しかし、漁船に家族などごく数人が乗り組み、魚を獲ってこられるのは、漁船に動力が付いているからである。航行に用いるエンジン、網の巻揚機など、これらを人力に頼ると想像してみたらどうであろうか。膨大な人手が要ることがわかる。江戸時代においてその人では、漁師間の隷属関係を背景として確保される場合もあれば、賃金を支払って雇用される場合もあった」(234)。
[J0590/250712]
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