副題「誰が子どもを支えるのか」、岩波新書、2024年。この新書は、いま社会に必要とされている仕事。たいへんしっかりした内容の労作で、ありがたい。
第1章 教員不足をどうみるか―文科省調査からはみえないもの
第2章 誰にとっての教員不足か―教員数を決める仕組み
第3章 教員不足の実態―独自調査のデータから
第4章 なぜ教員不足になったのか(1)―行財政改革の帰結
第5章 なぜ教員不足になったのか(2)―教育改革の帰結
第6章 教員不足をどうするか―子どもたちの未来のために
第7章 教員不足大国アメリカ―日本の未来像を考える
第8章 誰が子どもを支えるのか―八つの論点
まずは、教員配置の複雑なしくみを説明。現在の教員不足をもたらした諸要因の説明を読んで、思い浮かぶ感想は、ここ四半世紀の教育政策が愚かすぎるということ。逆に、それまでの戦後日本の教育政策にかんして感じるのは、個々の家庭や地域の事情の格差を埋めるべく、相当理想主義的に進められてきた印象だが、それが現実的にも良い結果をもたらしてきたのだな、ということ。理想論を否定し、表層的な「現実主義」で押しとおして、「現実」にもマイナスの結果にしかならないのでは本当にしょうもない。
じつは、本書の内容で一番驚愕したのは、アメリカの学校教育の惨状。よくこれで国が成り立つなと思うレベル。教員に対する社会的リスペクトが不足していることが大きく影響するとともに、社会的分断が教育現場に持ちこまれて、むしろ学校こそがその分断の最前線になってしまっているのだという。安い労働力を求めた結果としての教職の女性化も、長くアメリカの教育の特徴であるらしい。ただし日本の教職員数は、OECDでもっとも低く、そのアメリカの教職員の六割ほどしかないとのこと。
[J0567/250227]
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