副題「本当に聞きたかった緩和ケアの講義」、金原出版、2015年。

オリエンテ−ション:緩和ケアをめぐる10の提言
1学期 痛みの治療と症状緩和
 第1講 痛みの治療1.─最初の対応
 第2講 痛みの治療2.─痛いと言わない患者
 第3講 痛みの治療3.─医療用麻薬の使い分け
 第4講 神経障害性疼痛
 第5講 呼吸困難・吐き気
 第6講 腹 水
 第7講 食欲不振1.─「食べる」悩み
 第8講 食欲不振2.─輸液
 第9講 倦怠感
 第10講 不 眠
 第11講 せん妄
2学期 鎮静と看取りの前
 第12講 鎮静1.─鎮静の説明
 第13講 鎮静2.─鎮静が必要な方へ
 第14講 看取りの前1.─死なせてほしい
 第15講 看取りの前2.─死の経過
3学期 コミュニケ−ション
 第16講 コミュニケ−ション1.─緩和ケアって何?
 第17講 コミュニケ−ション2.─がんの告知
 第18講 コミュニケ−ション3.─化学療法の中止
 第19講 コミュニケ−ション4.─余命告知
 第20講 コミュニケ−ション5.─家族ケア
 第21講 その他1.─患者の自殺
 第22講 その他2.─民間療法
 第23講 その他3.─医療者のバ−ンアウト
終業式のことば:あとがきにかえて

個人的には、せん妄の記述をチェックしながら。ほとんどのがん患者にはせん妄が出現する。せん妄は意識の夕暮れ時である。せん妄の患者はどこか呑気である。一方で、鎮静が必要になる原因の第一はせん妄であり、それは患者・家族・看護師ともにつらい体験である。

「終末期せん妄は過活動せん妄を回避し、低活動型せん妄の状態に誘導する、つまり「穏やかさ」を取り戻す治療が目標となります。・・・・・・穏やかに亡くなることができない患者のほとんどは、このせん妄による不穏が強いためです。鎮静の対象となる症状で一番多いのがせん妄です」(194)。

「特別な一日」ということ。「経験的に、患者と医師の間、家族と医師の間には「特別な一日」が訪れることがあると以前から感じています。この日は何かいつもと違うことが起こります。例えば、それまで落ち着いていた患者の痛みが急に強くなったり、全く別の用件で対応している間に、患者が人生におけるとても大事な話を語り始めたり、たまたま廊下で出くわした家族から患者の重大な問題点を告白されたりと、不思議なタイミングで急に「特別な一日」は訪れるのです」(19)。「「特別な一日」は、医師と患者、家族との間に心と心のつながりが生まれる大切な日になることが多いのです」(20)。「「特別な一日」の訪れを見失わないようにするには、結局医師の直観だけが頼りです。・・・・・・自分の直感が十全に働くような自分になれるよう、毎日自分の心身をメンテナンスすることが医師には求められるのです」(20)。

また、著者は、医師という職務を全うするためには、「自分を割れ」「社会的な役割を演じきれ」と述べる。その際、「たった一つの本当の自分」という見方を否定して、複数の顔がすべて「本当の自分」だとする、平野啓一郎氏の所論を引いている。

「病気は患者のもの」。「開業し2年が経とうとしている今、「患者の病気は患者のもの。医者や病院が取り上げてはいけない」と思うようになりました」(293)。

[J0500/240819]