副題「近世寺院の苦しい財布事情」、吉川弘文館、歴史文化ライブラリー、2025年。

現代につながる江戸の仏教―プロローグ
近世寺院とはなにか
 仏教を取り巻く社会環境
 寺檀制度の外側
苦しい台所事情
 禁制宗派の生きる道
 進む過疎、消える住職
 住職の引き継ぎも金次第
寺の経営戦略と地域
 寺院資産は誰のものか
 知名度を上げろ
近世寺院が語るもの―エピローグ

江戸時代の仏教というと、寺請制度のもとにある葬祭寺院だけが取りあげられがちだが、その外にある祈禱寺院が数多く存在したという。たとえば、関東における真言宗寺院のデータで言うと、葬祭寺院が18%に対して祈禱寺院の数は82%におよぶという。

その祈禱寺院の経済事情。「原則として、寺請や葬祭を執行することができない住職によって営まれる祈禱寺院は、檀家に依存するのではなく、所持耕地からの地徳によってその経営を維持していたことが明らかである。・・・・・・俯瞰すれば、祈禱寺院の住職は、地徳による経済基盤を確保し、その補完によって宗教活動を展開していたと考えられよう」(94-95)。

[J0602/250823]