副題「死者図像の物語と民俗」、三弥井書店、2020年。
収めている幽霊画に逸品が多い上に、文献のみならず現地調査に裏付けられた論考の内容も水準が高く、出版物としてすばらしい。150点ものカラー図版を収めているのだけど、個人的に、文章ページと図版ページが同じ紙質で、つるつるでない紙を使ったこういう本が好き。

第1章 寺と幽霊画
 高僧絵伝から幽霊画へ―死者救済の思想と図像化
 子抱き幽霊図の原風景―産死供養の図像
 円山応挙伝説考―幽霊画をめぐる「物語」の成立
第2章 血族の証明
 幽霊画の秘密―金沢・鶴林寺
 失われた絵の帰還―会津市松沢寺
 奥州四十九院家の記憶
第3章 寺蔵幽霊画を巡る旅
 みちのく幽霊画紀行―呪具としての死者図像
 幽霊画のまち―弘前市禅林街
 御用絵師の女霊救済
 薄幸の女霊図―丹後夕日ヶ浦
 「産女の幽霊」を祀る―長崎光源寺
第4章 幽霊画と江戸怪談
 江戸はなぜ女霊の時代となったのか―後妻打ち怪談をてがかりとして

幽霊画にも地方性があるらしく、とくに北東北は幽霊画の宝庫だという。津軽などでは富裕層に幽霊画を魔除けとして置く風習があったという。ねぷた絵と幽霊画の関係性の話もおもしろい。
弘前市のギャラリー森山では八月に幽霊画を集めた「ゆうれい展」をやっているらしく、ぜひ一度行ってみたい。https://www.instagram.com/gallery_moriyama/

収められている幽霊画も迫力のあるものが多いが、長崎市光源寺にある産女の幽霊の木像というのも凄いインパクト。

巻末には、全国の寺院所蔵幽霊画一覧がついている。

[J0609/251018]