副題「民俗採訪につとめて」、ワン・ライン、2006年。著者の調査研究歴をたどった自伝的記述だが、このほかに『民俗学六十年』(一九九八年)があるので、本当はあわせて読む必要がありそうではある。
1 サエの神に始まって
2 タタラ・金屋子神をたずねて
3 納戸神との出会い
4 俗信の由縁を探る
5 イエの神・ムラの神、年頭行事
6 離島を訪ねて
7 奥所の神楽
8 民俗の地域差を考える:北陸同行地帯と安芸門徒地帯
とくに戦前における、著者若かりき頃の民俗採集には、知られる民俗がまだまだたくさん埋もれていた頃の夢がある。著者は國學院大學在学中に折口信夫の講義を受けており、公開講演として柳田國男の話も聞いている。たたらについて書いた論考が柳田の目にとまるなどのこともありつつ、1946年に直接、柳田國男を訪ねるにいたっている。
いまからみれば、あれこれの論文を読む以上に、こうした調査記録の方がおもしろい。民俗事象を切り取って論じるタイプの民俗学的な論文は、本来、調査記録すなわちフィールドノートとセットで読まれる必要(したがって書かれる必要)があるのではないか。その意味では、このように自身の調査研究歴を記して出版できた氏のようなケースは幸運である。
[J0551/250122]