岩波新書、1982年。初版は1959年。

はじめに
I 原始社会の文化
II 古代社会初期の文化
III 律令社会の文化
IV 貴族社会の文化
V 封建社会成長期の文化
VI 封建社会確立期の文化
VII 封建社会解体期の文化

ちょっと理由があって手に取る。なるほど、今ではこういう、著者自身の「価値判断」が色濃く出た通史を書くのは、難しいだろうな。家永のその「価値判断」が、記述に精彩を与えている。宗教思想に対する造詣が深いのも、彼の特徴。もうひとつの特徴は、江戸時代や封建社会の文化に対する評価の低さで、「民主主義的な」立場からの批判意識が感じられる。宗教思想へのある種の共感と民主主義とは必ずしも当たり前に結びつくものではないが、安丸良夫がその後継者として思い浮かぶ。また、相対的に中世文化への評価が高いが、こちらは網野善彦史観との共通点を持つ。

しかし、「文化」という括りは難しいものだ。政治と対置できるという意味では「生活」や「民俗」と並べうるが、とくに高尚な文化をも含む点で、庶民に焦点のある両者ともまたちがっている。

[J0280/220729]