副題「中原昌也自伝」、新潮社、2011年。

第1夜 気づいたら満州引揚者の息子
第2夜 ろくな大人にならない
第3夜 教育なんてまっぴら
第4夜 どんよりとした十代
第5夜 暴力温泉芸者は高校四年生
第6夜 世間の茶番には勝てん

著者が子ども時代を過ごした1970年代や1980年代のカルチャーの話が山盛り、それから戦争体験者だったという高齢の父親の話、どこまでも個人的な話でありながら時代性も濃い。

中原昌也といえば「サブカル」と結びつけられやすいが、本人はぜんぜんサブカルじゃない。サブカルに分類されるあれこれが好きなのはたしかとしても、サブカル界隈特有の構えた姿勢がまったくなくて、本書を読んで感じたのは、なんて素直な人、率直な文章なんだってこと。たとえば、ホラーやノイズが好きなことを語る傍らで、タモリの芸達者に憧れてたとか、そうそう、逆張り的なところがまったくない(と、僕には感じられる)。このように自分の感覚に率直な人の言葉って、「みもふたもない言葉」として、ついついポーズを取ってしまう側の人にはときに恐ろしく感じられる。率直であるだけの中原さん本人は心外だろうけども。
[J0432/231208]