ちくま新書、2018年。

第1章 人種と移民
第2章 女性たちが牽引した社会変革
第3章 LGBTの平等要求運動の勝利
第4章 オバマからトランプへ

なるほど、人種問題、ジェンダー問題、LGBT問題をばらばらに扱うのではなく、アメリカ社会の歴史に乗っけて説明をするというコンセプト、この本だけでそれぞれの思想内容を深く知るというのは難しいにしても、概観としておそらく例のない有益な一冊。社会思想の内容を知るには「流れ」が分からないと分からない面があるけど、そこをフォローしてくれる。

Black Lives Matter が日本で認知されたのは、今年2020年5月のジョージ・フロイド事件からの流れではないかと思うが、この本はすでにBLMの説明も含んでいる。

「おわりに」でも筆者自身が触れているが、オバマ政権の登場にいたるまで社会の「進歩」が進み、次にはヒラリーが女性大統領になるという想定が裏切られて、トランプ勝利という「逆コース」の始まりに困惑しているところがまた別の意味で面白い。

行きすぎた抑圧が逆に強い反発と改革を生むなんてことは歴史上よくあることで、昨今のBLM運動の高まりをみたら、トランプ政権の理不尽さが逆にいちはやい改善へと機能しないかと期待してしまう。

[J0087/200912]