Month: August 2022

島薗進「宗教学者がみた統一教会」

YouTube、デモクラシータイムス、「統一教会の”特異”とそのカルト性の”普遍” 島薗進さん 世界を変える100人の働き人66人目 2022.7.29」。

「日本がキリスト教の侵入を防ぐことができたのは、新宗教がその受け皿になったからである」。

「民主化時代の韓国には、世界大戦による南北分断を背景に、人類の受難を引き受けているという意識が強くあった」。なるほど、統一教会だけでなく、韓国におけるキリスト教一般の伸張にも当てはまりそう。

[J0282/220805]

クリスチャン・カリル『すべては1979年から始まった』

副題「21世紀を方向づけた反逆者たち」、北川知子訳、草思社、2015年。原著、Christian Caryl, Strange Ravels, 2013.

プロローグ 激しい反動 
第1章 不安の高まり 
第2章 辰年 
第3章 「粗野だが、歓迎すべき無秩序状態」
第4章 革命家の帝王 
第5章 トーリー党の暴徒 
第6章 贖罪の夢 
第7章 イマーム 
第8章 銃を片手に 
第9章 預言者のプロレタリアート 
第10章 事実に基づき真実を求める 
第11章 殉教者の血
第12章 レディ 
第13章 三度の追放と三度の復権 
第14章 伝道師 
第15章 一千百万人の国民
第16章 バック・トゥー・ザ・フューチャー 
第17章 第二の革命 
第18章 ブリッジを好む
第19章 兄弟の支援 
第20章 「連帯」 
第21章 ホメイニーの子供たち 
第22章 ジハード
第23章 「女性は後戻りしないものです」 
第24章 有中国特色的社会主義 
エピローグ 進歩がもたらす問題

舞台は1979年の世界地域と共通するが、サッチャーのイギリス、鄧小平の中国、ホメイニーのイラン、ヨハネ・パウロ二世のポーランドと、複合的なドキュメンタリー。こんなに読むのに時間がかかった本はひさびさだ。それぞれ、別々に読んでちょうどいいくらいかもしれない。

現代政治における宗教の力を示す書として読まれているし、カリルもそのつもりだけれども、それはそれでちょっと誇張のような? もっとも、今まで、あまりに宗教の政治的影響力が軽くみられてきたというのは本当だろう。

イラン革命の経緯はとくにおもしろい部分だが、この本を読んで、「イラン革命の影響」という主題の重要性を改めて感じた。というのは、21世紀のイスラーム主義の台頭と、イラン革命が直接には結びついてはいないからだ。そこにはねじれがある。イラン革命の重要な遺産を説明して、「古くから対立するイスラム教のシーア派とスンニー派への影響だった。1979年以前はこの対立が世界政治に影響を及ぼすことはほとんどなかったが、79年以降は避けられなくなった。神の統治を再構築するうえで、いかなるイスラム教国家よりも前にシーア派が成功したということは、スンニー派にとっては、計画的な侮辱にも近い驚くべき展開だった」(390)。

もうひとつだけここにメモをしておくと、西洋社会がしばしば宗教の力を軽視しているのに、中国共産党は正しくも宗教勢力を軽視することがないというカリルの指摘はおもしろい。たしかに、中国の法輪功弾圧は外からみると神経質すぎるように見えるし、チベットへの態度も、チベット仏教への警戒心があるという。ふむ、なるほど、そういうこともありそうだ。

[J0281/220804]