PHP研究所、2022年。副題「まちかどから見るプーチン帝国の素顔」。

第1章 ロシアに暮らす人々編
第2章 ロシア人の住まい編
第3章 魅惑の地下空間編
第4章 変貌する街並み編
第5章 食生活編
第6章 「大国」ロシアと国際関係編
第7章 権力編

キュートな表紙で、ロシアの街ぶら的な本である。が、さすが軍事研究者、街ぶらであっても、ひと味もふた味もちがう。気軽に読めて、ロシア社会への理解も深まる。

以下、抜き書きメモ。
「ロシアのマフィアは刑務所に入れられる度、正教の象徴であるタマネギ屋根の聖堂の図を入れ墨するそうです。したがって、タマネギ屋根の数が多いほど、何度も「ムショ入り」してきたことになるわけで、これが彼らの勲章であり箔付けにもなるのでしょう」(35-36)

ロシアの実質的な国力は大きいとはいえないという、筆者の指摘。人口も、1億4400万人程度で、減少傾向。GDPは韓国レベル。それでも、アメリカと対峙する「大国」として振る舞っている理由のひとつは、ソ連から受け継いだ国連安保理常任理事国としての地位。国土の広さ。それから、核戦力を含めた軍事力。「言い換えるならば、ロシアを「大国」たらしてめているのは意志の力、つまり自国を「大国」であると強く信じ、周囲にもそれを認めさせようとするところにあるといえるでしょう」(148)。なるほど。「「大国」であろうとし、実際にそのように振る舞うロシアは、他国に対しても同じような基準で値踏みをします。つまり、「大国」として一目置くべき相手なのか、そうでないのかということです」(149)。なるほどなるほど。

プーチンが権力の座から降りられない理由について。たとえば、大統領経験者には不逮捕特権を与えるといった法的保障をつくってプーチン個人の安全を確保することはできるかもしれないが、プーチン権力下で甘い汁を吸っていた側近は、プーチンに辞めてもらっては困るとの筆者の指摘。

[J0300/221002]