副題「中東の子ども時代(1978-1984)」、鵜野孝紀訳、花伝社、2019年、原著2014年。今回はマンガ本、シリア人の父とフランス人の母をもつ著者が、リビアやシリアで過ごした幼年期の体験をマンガにしたもの。子どもの目を通して、シリアやリビアの状況や、当時の時代が伝わってくる。子ども目線なので、アラブ社会の女性たちの日常生活をかいまみることができるのも貴重。

なかなか残酷で「野蛮」な描写も少なくないが、なんだろう、なぜかどこか懐かしく感じる要素もある。たとえば今の若い人が読んだら、懐かしさなど皆無で、まったく異世界のことだと感じるのだろうか。そのへん、どこまで読者側が生きた時代や経験に依存しているかは、分からない。

匂いの描写が多いのも、子ども時代の記憶を忠実に描いているからだろう。シリアに越してすぐ、屋上から村を眺めるシーンが好きだ。レジ袋が空に舞っていて、茫漠とした景色。いつか自分が見た景色と錯覚しそうだ、といったら言いすぎだろうか。

[J0234/220216]