つり人社、2021年。

Interview: 幼少期から現在まで水辺がライフワーク!山室真澄教授の信念に迫る
魚はなぜ減った?見えない犯人を追う
1. 宍道湖のシジミ研究とネオニコチノイド系殺虫剤
2. カギを握る「食物連鎖」と宍道湖の生態系
3. ミジンコのエサは減っていたのか?―水辺の有機物と物質循環の概念
4. 「動物プランクトン」「エビ類」「オオユスリカ」の同時期の激減
5. 容疑者をネオニコチノイド系殺虫剤に絞り込んだ根拠
6. 釣り人の視点が生態系全体の保全のヒントになる
7. ネオニコチノイドに頼らない農業に向けて)
まとめ/月刊『つり人』編集部 脱「ネオニコ」の可能性を探る。

1993年からウナギとワカサギの漁獲量が激減した宍道湖。その原因が、湖に流入したネオニコチノイド系殺虫剤ではないかという仮説を立てる。ネオニコチノイド系殺虫剤は直接に魚を殺すわけではないが、そのエサとなる昆虫類に毒性を発揮する。あれこれ、興味深い。

沿岸域や河川は、遠洋漁業とはちがって外国との競争にならない。だから大事なもののなのに、水辺への関心が薄いという指摘。(9)

過去の農薬と異なり、ネオニコチノイド系殺虫剤は魚を直接死に至らしめたわけではないため、異常が発覚するのが遅れた。(86-)

「ポイントは稀少種ではなく、普通種が急にいなくなることだ」(93)。「昆虫や植物の場合、稀少種についてはどこにいた、どれくらいいたと多く記録される一方で、普通種はいて当たり前だからと、記録されるのはまれだ」(93-94)。なるほど、生物学だけでなく、広く科学的観察にありがちなことのように思われる。海洋生物の場合、だからこそ、釣り人の視点が重要なのだという。

実は、中国並みに農薬を投下している日本。「国産農作物は世界一安全」という間違った神話が信じられている。

実は宍道湖はもともと生物種の数が少なく、たとえば底生動物の重量比ではヤマトシジミが97%を占めているのだという。そこで筆者は、卒業論文で「宍道湖の湖底にいるすべての底生動物の現存量を種類ごとに調べる」という「無謀な」研究を実施できたのだという。こういう、一見、方法論的にはプリミティブな研究こそ、重要な発見をもたらしたり、他の研究の基礎になるということはどんなに強調してもしすぎることはない。
[J0299/220925]