古川哲男編、コピー製版、1998年。兵庫は但馬、鳥取県と接した香美町の城下町。9号線沿いに、旧美方郡役所の建物を活かした「村岡民俗資料館まほろば」という施設があり、そこで100円で購入。内容は、1866年に起きた一揆の様子を、郷土史家とおもわれる著者が、旧家の文書の記述を集めながら描き出したもの。

一般に、どの程度、各地の一揆の記録が細かく残っているのかはしらないが、この小冊子は、村人の様子や訴えの内容が詳細に記載されていて興味が尽きない。長州征伐などに動員がかかっていて、藩も苦労、人びとも苦労していた時期。

藩に対する要求には、人夫方の話、米価の話、役人の解任の話など、さまざま。おそらく、ひとつひとつの案件について交渉をするシステムがないから、不満が表に出るときは一挙に出るかたちになる。また、物価の値上がりが一番の問題らしく、経済学的な知識や情報がゆきわたっていないところでは、どうしても「大庄屋や商人の悪だくみによるのでは」という疑念が強くなる。「封建制下陰謀論」とでも呼んでみる? 市場経済・貨幣経済と、情報共有システムに欠けるこの種の封建的支配体制の相性には限界があるという気がするね。

[J0298/220925]