武舎ゆみ訳、角川書店、2005年、原著『神話小史』も同年出版。

1 神話とは何か
2 旧石器時代 狩人の神話(紀元前二万年‐紀元前八千年)
3 新石器時代 農耕の民の神話(紀元前八千年‐紀元前四千年)
4 文明の始まり(紀元前四千年‐紀元前八百年)
5 枢軸時代(紀元前八百年‐紀元前二百年)
6 枢軸時代以後(紀元前二百年頃‐西暦一五〇〇年頃)
7 西欧の大変革(西暦一五〇〇年頃‐二〇〇〇年)

神話論にはトンデモ本も多いが、この本は想像以上に良い本だった。宗教学・神話学の古典を踏まえつつ、神話が持つ積極的な意義に関する彼女自身の見解が盛り込んである。歴史における神話の変遷を描いているところがポイント。

実は、エリアーデを批判の対象としてしか扱わなくなって以降のアカデミックな宗教学は、「神話が持つ力」といった主題からはもう降りてしまっている。そんな中でこの本は、人間の精神性を考える上で、神話が依然興味深い主題であり続けていることを教えてくれる。

[J0301/221004]