新装版、亜紀書房、2021年、原著は2017年。

第1章 動物たちの痕跡
 けもの道の見つけ方
 フクロウの棲む谷
 動物たちの住宅事情
第2章 生と死のエコロジー
 自然界のサプリメント
 スカベンジャーたち
 死の終わり
第3章 文明の力、自然の力
 被災地の動物たち
 外来種と在来種
第4章 人間の傍で
 シナントロープたちの事件簿
 人間の同伴者
終章 森と動物と日本人

本書を読むと、宮崎さんの仕事がまさに自然界の報道写真家だということがよく分かる。つまり、たんに人間社会/自然界という二分法を前提してどちらかを理想化したり破壊を嘆いたりするのではなく、そんな境界線を意識せずに自らの世界として生きる動物たちの現実生活をひたすら見つめる。これこそ、エコロジーすなわち生態学。サナトロジーでもある。とにかく濃い一冊。聞き役の小原さんはときおりカルチュラル・スタディーズの視点をはさんできたりして、宮崎さんとは志向はちがっているようにみえるが、出すぎてもおらずほどよいアクセントになっている。

少し似たテーマの本では、チャールズ・フォスター『動物になって生きてみた』が話題にもなって、そちらもたしかにおもしろかったが、この宮崎本の方が圧倒的に示唆に富んでいる。そうそう、フォスター本とはちがうこの本の凄さのひとつは、食べる食べられる関係の豊かさを示しているところ。たとえばシカの死体に次々と段階的にちがった動物が集まる話であったり、そうした食べる食べられる関係があちこちで、ひとつの世界を形づくっていることを、この上なく具体的に示しているところ。本書冒頭に少し出てきた、自動で撮るのは写真家といえるのかなどと宮崎さんに向けられてきたという横やりなど、簡単にぶっとんでしまう。

なお、立花隆『青春漂流』(1985年)は、34歳の頃の宮崎さんを取材している。

[J0330/230129]