昨年(2016年)に出た、岩波新書のシリーズ4冊。

・五味文彦『中世社会のはじまり』

・近藤成一『鎌倉幕府と朝廷』

・榎原雅治『室町幕府と地方の社会』

・村井章介『分裂から天下統一』

一応、年代ごとに分けてあるが、それぞれあまり関連がない独立の著作といっていいもので、あまりシリーズ感はない。

一番おもしろく感じたのは、第四巻で、さすがはこのトピックでの仕事も多い村井さん、世界史のなかの日本という視点から、近世前夜のようすを説得的に描いている。なかでも、文禄・慶長の役(朝鮮出兵)を扱った「16世紀末の“大東亜戦争”」という章が白眉。

第二巻、第三巻とも、従来の見方と異なる新鮮な記述があったが、第一巻にはちょっと違和感。地方での展開への配慮、文化史的な要素の重視など、ここ数十年の歴史学のトレンドを汲もうとしているようなのだが、まったくの素人目からみると、そうした試みもあたかもとってつけたもののように見える。

「中世の文化は家の文化を起点として、身体の文化を経て職能の文化が展開し、それらがこの時代には型として定着したのであり、さらには今日の社会へと継承されてきているのである」(239頁)というのが、第一巻最末尾のまとめの文章。では、中世以前の文化が身体の文化でないとしたらどんな文化なのだろうかとか、身体の文化と職能の文化のどこがどう関係しているのかとか、疑問だらけというのが正直な感想。

[J0005/170508]