河北選書、河北新報出版センター、2021年。

第1章 宮城の芸能素描
第2章 仙台城下における芸能
第3章 法印神楽の変化
第4章 南部神楽の流行
第5章 十二座神楽の拡大
第6章 大乗神楽の対応
第7章 仙台の田植踊と歌舞伎
第8章 鹿踊の定着
第9章 明治期の雀踊
第10章  神仏分離と宮城の芸能

宮城県縛りの詳細な記述で、僕には専門的すぎるところもあるが、充実した内容の上にカラー図版も豊富で本体価格800円とは、お得感あふれる一冊。

島根県における神楽ほどのプレゼンスはあるのかまでは分からないが、宮城にも豊かな芸能の伝統があることを、この書は教えてくれる。特徴といえば、やはり修験道がその中心を占めていること。もしかして、島根県と比べて宮城県の方が近代以降における民俗芸能の衰退が著しいとすれば、その最大の担い手が修験だったからと考えることもできそうだ。戊辰戦争の影響といい、西南日本に比べると、東北地方では江戸時代と明治時代とのあいだの断絶が深いようにも思う。

出雲流神楽・佐陀神能の影響についても記述あり。とくに秋保神社(江戸時代までは諏訪神社)には16世紀末頃にすでに出雲から宮川流(佐陀神能)が伝わったとの記述があるそうで(86)、そうだとすれば、京都から猿楽能が佐太神社に伝わった本当に直後くらいにこれが宮城にまで伝わったことになる。[J0378/230628]