必要があって、ここ数日で再読・新読(なんて言葉はないが)したもののメモ。倫理学やフェミニズム思想を知らないだけかもしれないが、キテイさんの議論は、ロールズ以降、一番重要だとおもう。

マーサ・A・ファインマン『ケアの絆』(穐田信子・速水葉子訳、岩波書店、2009年、原著2004年)。方向性は同じだけど、キテイの方が正義論としてラディカルであり、その分射程が広いという印象。逆に言えば、大枠で家族論の範疇にとどまっているファインマンの方が分かりやすいといえば分かりやすいが、『家族、積みすぎた方舟』(速水葉子・穐田信子訳、学陽書房、2003年、原著1995年)の方を読めば十分かなあ。上野千鶴子の解説もついているし。

有賀美和子『フェミニズム正義論』(勁草書房、2011年)。このあたりの議論を整理。整理としては有益かもだが、一言でいえば無難。20頁弱のコンパクトなレビューとしては、『講座 ジェンダーと法 第一巻』(日本加除出版、2012年)所収の岡野八代「ケアの倫理と法」がある。岡野『フェミニズムの政治学』は現在取り寄せ中で、またそのうち。

エヴァ・キテイ、岡野八代、牟田和恵『ケアの倫理からはじめる正義論』(白澤社、2011年)。『愛の労働』を読めば良くて、この本は要らない。どうせだったら、もっとちゃんとした入門書にしてくれたら良かったのに。一点気になったのが、著者のひとりが単身者を「ケアのフリーライダー」「ケアの一方的な受益者」と位置づけているくだりで、この発想ははたしていかがなものか。

まず、単身者はケア負担から逃げるためだけに単身でいるわけではない(笑、を入れてもいい笑)。それよりなにより、ケアをたんに、しぶしぶ誰かが引き受けるべき負担という面からだけ捉えてしまっていいのだろうか。

[J0012/170522]