副題「自由を探求した思想家」、中公新書、2023年。

第1章 ミルの生誕から少年時代
第2章 「精神の危機」とその後の模索
第3章 思索の深まり
第4章 『自由論』
第5章 『代議制統治論』
第6章 『功利主義』
第7章 晩年のミル

日本で「代表的な哲学者」を聞かれてミルと答える人はまずいないと思うけど、イギリスや英語圏では本当に尊敬されていて、その上位に位置しているという印象がある。かの国では、政治をはじめとする実学の領域と、哲学との距離が近くて、その領域で活躍したひとりがミルということなんだろうね。

本書は、生涯を通じたジョン・スチュアート・ミルの問題関心を踏まえながら、著作ごとに解説を加えていて、副読本によさそうだ。いくつかメモ。

ミルは手紙の中で「鉄の檻」という表現を使っているが、これはジョン・バニヤンが『天路歴程』で、信仰を失って絶望にいる状況を指した表現なのだと。明らかにヴェーバーは、バニヤンを読んでいたわけだが、「鉄の檻」がバニヤン由来かもという説はあったっけ。

ミルの自由論の仮想敵の一つはコントで、彼はコントの所論をエリート専制を導くものとみていたとのこと。

晩年のミルはロンドンとアヴィニヨンを行き来する生活をしていたらしいが、アヴィニヨンでは無名時代のアンリ・ファーブルと交流があって、しばしばファーブルと植物採集を楽しんでいたと。ミルが命を落としたのも、ファーブルとの植物採集の前後に感染した「丹毒」だったのだとか。

ジョン・スチュアート・ミルの著作集全33巻は、こちらのサイトで閲覧可能。
https://oll.libertyfund.org/title/robson-collected-works-of-john-stuart-mill-in-33-vols

[J0431/231205]