弦書房、2014年。

第1章 小笠原諸島の発見
第2章 日本人の大航海時代
第3章 「無人島」探検
第4章 「無人島」から「ボニンアイランド」へ
第5章 太平洋の世紀
第6章 ペリー提督の小笠原
第7章 幕末の小笠原

近世まで無人島だった小笠原諸島が、太平洋を外国船が行き交う時代になって、歴史の激流に放り込まれた近世・近代。そのなかで「小笠原」という名称が定着するにいたったが、本書によれば、最初にこの島への探検航海を成功させたのは、末次茂朝と嶋谷市左衛門という人物で、河村瑞賢が西回り航路を確保した頃と同時代のこと、家綱の幕府の意向があったらしい。

その後、島は長らく放棄される状態になり、1830年、アメリカ人ナサニエル・セボリーらの多国籍グループが、ホノルル経由で父島に入植。外国諸列強がこれら島々に目をつけはじめてから、幕府が小笠原島を「奪還」しようとオランダから購入した咸臨丸を派遣したのが1862年。小笠原の開拓にも貢献した咸臨丸・朝陽丸・千秋丸の乗組員たちは長崎海軍伝習所や築地海軍操練所で学んだ人たち。彼らは当然、旧幕府の下にいた人たちで、多くの人が幕府瓦解のあとは榎本海軍に参加して戦死したりしたとのことである。

著者の松尾龍之介さんの本職は漫画家で、在野の歴史家とのこと。本書は一般の郷土史家の範疇をこえた、充実したすばらしい仕事。

[J0433/231211]