みずからのがん経験も元にしながら、「賢い患者」として医療に関わる方法を提案する。こういう積極的な方がいてくださるから、世の中が良くなるという気持ちと、病気になってなお「賢い患者」たらねばならないのは、なかなか辛いなという気持ちと、両方。岩波新書、2018年。

序章 私の患者体験
1章 患者、家族の声を聴く──電話相談
2章 患者や家族が直面したこと──comlに届いた相談から
3章 患者が医療を受けるとき──『新 医者にかかる10箇条』
4章 患者が医学教育にかかわる──模擬患者
5章 患者が病院を変えていく──病院探検隊
6章 患者が参加する──「医療をささえる市民養成講座」
7章 患者を“支え抜く”ということ──辻本好子のキーパーソンとして
あとがきにかえて

本筋からまったく離れてしまうのだけど、自分の関心である終末期体験のエピソードが出てきているのでメモ。

危機状態に陥ったとき、耳だけが鮮明に聞こえていたという話(26)。また、いわゆる幽体離脱の体験(27)。「この経験を通して、私は「死とは感情がなくなること」と考えるようになりました。…… 「死」とは恐れるものではなく、肉体を持つ人間に備わってしまっている自力ではどうしても制御できない〝感情〟を昇華できることなんだと感じたのです」(27-28)。

さらに、著者の先達である辻本好子さんの死の場面。著者自身がそのとき手術を受けていて、「手術が終わって二日目の朝七時ごろ、ぼーっとベッドに横になっていたときです。私の耳に明らかに辻本の私を呼ぶ声が聞こえました。名前を呼ばれただけですが、その声が「ごめんね、もうこれ以上がんばれない」という想いが込められたメッセージだと確信を持って伝わってきたのです」(227-228)。例によって、まさにそのときに本当に亡くなっていたのだと。

患者の権利を求めて、きわめて現実的でアクティブな人のお話だけに、印象的。[J0451/240125]