法蔵館、2020年。2019年に実施されたシンポジウムの内容をまとめたもの、開催場所が山口県と言うところがポイント。廃仏毀釈といえば薩摩藩、それから山口にほど近い津和野藩の話題が「代表例」として真っ先に出てくる。ところが、明治維新のもう一方の担い手、長州藩の事情はさほど知られておらず、神仏分離を問い直すに面白いポジションにある。パネリストも充実していて、たんなるシンポジウムの記録以上の価値がある本になっている。

シンポジウム開催にあたって(高木智見)
基調講演 明治初期の宗教政策と国家神道の形成(島薗進)
発題一 中世における神仏習合の世界観(真木隆行)
発題二 近世史研究からみた神仏分離(上野大輔)
発題三 現代の宗教者から捉えなおす神仏分離と宗教的寛容(木村延崇)
特別寄稿 狂言と神仏習合:山伏狂言「梟」を中心に(稲田秀雄)
討議
総括 神仏分離をどう考えるか(池田勇太)

上野大輔さんが、神仏分離論の主流を占めてきた法難史観を相対化する必要を訴えていて、各論としての説得力はまた別問題としても、問題提起としてはなるほどと感じたところ。

[J0076/200821]