美食家としても有名だった古川緑波のグルメ・エッセイ、河出文庫『ロッパ食談』。『あまカラ』、『ロッパ食談』、『ロッパ悲食記』を再編集したエッセイ集。

これを読むと、ロッパが育ちのいい江戸っ子だったことがよく分かる。いかにも都会風で、時代が全然ちがうが、永井荷風でも読むつもりで読むとちょうどいいかもしれない。

食について、戦前と戦後のようすのちがいがわかるのも興味深い。東京にギョーザ屋ができたのが意外と遅くて戦後だったとか、戦前コカコーラはコカコラと短く発音して、色もほとんど透明だったとか、そんなことがおもしろい。「蛍光燈の下に美味なし」と、食事の見た目について語ったりしているのも時代。あと、やたらに食に関する本を読んでいて、その感想が並べてある。

瀟洒っていうのか、軽く軽く書いて小気味よい。矢野誠一『エノケン・ロッパの時代』(岩波新書、2001年)なんかをみると、とくに晩年にはずいぶん苦労をしていたと暗く書かれているが、こういうエッセイは別物として眺めるべき。『古川ロッパ昭和日記』など、青空文庫でもいくつかロッパの文章を読める。

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