山岡清二・大野一訳、日経BP社、原著Election Campaigning Japanese Style は1971年出版、その後邦訳され、なんどか改版を経て2009年に出版された新版。

二〇〇九年版まえがき―政権交代がなぜ今起きたのか
はじめに―日本の選挙と私
第1章 代議士への関門―党公認の力学
第2章 固定票と農村戦術―垂直型組織の構造
第3章 地盤の壁―農村戦術の展開
第4章 保守浮動票―都市戦術の構築
第5章 後援会―一般票の組織化
第6章 運動なき運動―後援会と事前運動
第7章 自民党と利益団体―組織的支援の実態
第8章 握手と資金―終盤戦の戦術
第9章 代議士の誕生―伝統と変革のなかの選挙運動

舞台は1960年代、別府市や杵築市、豊後高田市を抱える大分県第二区。1967年の衆議院選挙に初当選を果たす地方政治家佐藤文生を追って、日本の地方選挙のしくみを描き出す。自民党から複数候補が立ってそれぞれの地盤のもとに競いあう中選挙区時代の動向がよく分かる。

当時の著者は、ここで描いている集票システムを、やがて来たるマスメディア時代には衰退するだろう生き残りとして捉えているが、少なくともその後数十年はしぶとく力を持ったシステムだろう。たしかに1996年の小選挙区制導入を画期として消えていった風景かもしれないが、「当時の当たり前」をきちんと記録しておくことの重要さを感じる。奇をてらったところのない記述が良い。著者は、外の立場に立って批判をしようとはしないし、理解はしてもことさらに擁護しようとするわけでもない。ここに描かれているのは、良くも悪くも恩義、世話、感謝、お礼の世界であり、かつ選挙戦としてはその論理に則った合理的判断が働いているところが面白い。

ところで、この『日経BPクラシックス』版はなかなか持ち心地がよいとおもったら、装丁は祖父江慎と佐藤亜沙実とな。

[J0115/201223]