梟社、2017年。日本独特の地方選挙を追って、ジェラルド・カーティス『代議士の誕生』が正統派のアプローチだとしたら、この書は異色の切り口。「民俗選挙」ということばひとつで、言い尽くされているね。津軽と甲州を対象に、あれこれの話題を拾って、最後は太宰治の長兄文治と、金丸信を取り上げ、柳田國男『明治大正史世相篇』に戻って締める。

序章 選挙楽しや牛馬にゆられ
1 津軽と甲州―その気質
2 津軽選挙の発生―金木町長選不正開票事件
3 二人町長と代理戦争―鯵ヶ沢選挙と大泉村長選
4 出稼ぎと行商―不在者投票
5 神仏の力と選挙タタリ
6 カネの力と悪銭
7 飲食の力と食物禁忌
8 無尽と葬式
9 村八分と地域ぐるみ
10 オヤコ選挙と骨肉の戦い
11 口碑と文芸
12 二人の政治家―津島文治と金丸信
終章 民俗選挙のゆくえ―柳田国男をめぐって

ネタとして興味を惹く話題が山盛り。取りあげればいろいろあるが、とくに気になったところを一箇所だけ。

「選挙神輿にのせ、揺さぶるのに婿養子は格好の餌食であった。村選挙はイジメの側面がある。タマ〔候補者〕は当選するまではイジメぬかれる。・・・・・・カネの要求は、尽きることがない。気心を知ったオイツキ(生付き)にはできない法外なかずかずの要求が待っていた。そこで立候補に二の足を踏むタマも少なくなかった。だが、イリットは、ムラから認知されるためにも、荒神輿に乗らなければならなかった。この供犠的役割を果たしたのが婿養子であった」(112)。

うーむ、話として聞けば面白いが、本当のことだとおもったら凄かね。[J0116/201223]