長谷川貴彦訳、岩波書店、2019年、原著2018年。カリフォルニア大学やペンシルバニア大学で教えていた著者には、『フランス革命の政治文化』など、邦訳された著書も多い。ウィキペディアを覗いてみると、彼女はもともと1945年にパナマで生まれたらしい。

第1章 空前の規模で
第2章 歴史における真実
第3章 歴史をめぐる政治学
第4章 歴史学の未来

エリートのものだった歴史学が次第に民主化してきたとしつつ、歴史の捏造や修正主義、記憶の政治学、教科書論争、さらにはヨーロッパ中心主義とグローバル・ヒストリー、ジェンダー問題といった、歴史をめぐるいまいまの諸問題を概観する。

歴史学の現在を考えるには格好の小著であるが、「なぜ歴史を学ぶのか」という問いに対し原理的な考察が為されているとは言えず、むしろ今日歴史学が置かれている諸条件を見渡した本として受けとめた。原題は「歴史はなぜ重要か」History: Why It Matters とのことで、ちょっと意訳して「歴史がなぜいま問題になっているのか」ぐらいに訳した方が内容には合いそうだ。

[J0124/210112]