岩波新書、2019年。

第1章「政治」とは何か
第2章「民主主義」の定義を考え直す
第3章「政策」は誰のためのものか
第4章 誰が、どのように「政治家」になるのか

なるほど、ジェンダー平等論の新世代というかんじ。声高にジェンダー平等を叫ぶという感じがないのは、じゅうぶんに気づかれてない女性排除の現状をひとつひとつ確かめるという意図からか。

想定されている読者のひとつは従来の政治学で、この本は政治学にジェンダー的観点の必要性を述べる際の基本図書になるだろう(というか、もうなっているのかもしれないが)。もうひとつは一般読者層で、政治理論と日本政治におけるジェンダー配置の実態を知るのにいい入門書になっている。当然、意識的あるいは無意識的な「フェミ嫌い」にまで響くかというとそれは最初から難しいことで、その層の説得に肩肘張る風でないのが、むしろこの本の利点のように思う。

政治設計の諸理念・諸理論に加えて、「たまたま」そうなってしまったという制度上の経路依存性の側面にまで目を配っているところもおもしろい。この経路依存性への配慮もまた、「私たちとあいつら」を区別して「ジェンダー意識の低さ」だけを糾弾する論法から、この書の議論を区別している。

[J0128/210131]