ちくま新書、2021年。

第1章 現代に連なる略奪・独占と抵抗
第2章 地域社会における軋轢と協調
第3章 便益と倫理を問いなおす
第4章 未来との共生は可能か
終章 ボーダーを超えた三つの共生

生物多様性という側面から、環境問題のポイントやその対策について考える。もちろん、SDGs とも関連が深い。

生物多様性は、実は実用面でも貴重な資源であるという。この観点からすると、きわめて多様な種を擁する熱帯雨林とは、たんに「緑が多い場所」ということではなくて、鉱物でいえば数多くのレアアースが眠っている大鉱床としても人類の財産であるというわけだろう。

さまざまな具体的事例に触れられているが、環境保護や生態系のコントロールは一筋縄ではいかないことがよく分かる。オオカミの絶滅や温暖化がシカ害の遠因となっているとか、アイルランドの飢饉が同一組成の遺伝子のジャガイモを栽培してたからだとか、いろいろ。

ひとつ、編集に苦情を言いたいのは、多くの文献が引いてあって書名は巻末に並んでいるのだが、どの記述がどの文献に依拠しているのか分からないつくりになっている。せっかくおもしろく豊富な話題に触れているのに、これではとても人や学生には薦められない。本としての価値は半減激減ですよ。

[J0170/210626]