インターナショナル新書、2019年。

第1章 「賃金21年ぶりの伸び率」という大ウソ
第2章 隠れた「かさ上げ」
第3章 隠される真の実質賃金伸び率
第4章 「かさ上げ」の真の原因
第5章 誰が数字をいじらせた
第6章 「ソノタノミクス」でGDPかさ上げ
第7章 安倍総理の自慢を徹底的に論破する
第8章 どうしてこんなにやりたい放題になるのか

本当は、この著者の解釈自体もよく検討しなければいけないが、ここでは基本的に正しいものと考えて・・・・・・。こういう統計の再検証という作業はそう楽しいものではないが、とても大切なことであって、こういう試みがあることに感謝。

この本の焦点はふたつあって、ひとつは統計の不正操作を指摘すること。もうひとつは「賃金が伸びないのに物価だけを急上昇させた」アベノミクスの失敗を批判すること。研究者的な目線で言うと、両者を同時にやってしまうと話がこんがらかりそうではある。

この本でも書かれているが、政府の答弁が質問にまともに答えない、クリンチ的なものだというのは、菅首相のときになっても酷かった。アベノミクスの帰結以上に暗澹とした気持ちにさせられるのは、統計不正やこの種の答弁の、事実軽視・論理軽視・対話軽視の空気。統計をたんに無視するというのではなく、適当にいじって利用するというところが本当に悪質で、それを許す社会全体の問題でもある。

[J0199/210917]