公益財団法人鉄の歴史村地域振興事業団『菅谷たたら山内総合文化調査報告書』2020年。
角田徳幸「菅谷鈩山内の施設」
木本泰二郎「菅谷たたら山内の建物の特徴について」
小池浩一郎「菅谷たたらに於いて水力送風の意味するところ」
大津裕貴「菅谷たたら山内を支えた牧野」
武藤美穂子「職能集落としての「菅谷たたら山内」とその居住空間」
小原清「昭和における菅谷たたら山内に対する認識」
鈴木昴太「菅谷たたら山内の生活誌」
鳥谷智文「五人組規約・矯風規約にみえる人々の暮らし」

公益財団法人鉄の歴史村地域振興事業団『菅谷たたら山内総合文化調査報告書2』2021年。
鳥谷智文「八重滝鈩における水力送風技術の導入」
武藤美穂子「「菅谷たたら山内」における長屋の考察」
峠理恵・鳥谷智文「聞き取り調査記録 菅谷たたら山内の女性たち(1)」
鈴木昴太「聞き取り調査記録 菅谷たたら山内における昭和期の操業と生活」
小原清「史料紹介 益田市指定文化財津島家文書「金屋子神秘禄傳 全」の解題と翻刻

菅谷たたら山内に関する報告書としては、1968年島根県教育委員会『菅谷鑪』以来のものと思われる。

個人的には、聞き取り調査がとくに興味深い。明治期の文書を材料にした報告書1の鳥谷論文では、結婚の際に石地蔵を運ぶ風のことが記されているが、報告書2の聞き取り調査ではそれが実体験として語られていて、びっくり。今でもまだ、こういう民俗調査が可能なんだな。どぶろくの検査が来たときには、「牛が出た」という暗号や回覧で伝えて酒を隠した話とか。

報告書1の鈴木論文から。たたら製鉄関係者が「タタラモン」として見下されてきたという話はよくあるが、逆に山内から周囲の百姓を「在」の「地下衆(じげしゅう)」と見下すようなこともあったとの話、なるほど、さもありなん。たんに固定的・一方的な差別ではなく、そうやって区別しあうような感じ、他にもよく見かけることだ。ここでも、もののけ姫の記述は誇張になる。「トンジンバナシ」といったホトケ下ろしもする拝み屋、民間宗教者との関わりもかなり詳しく書いてあって、興味深い。

菅谷山内の聞き取り調査としては、次のような論文も存在する模様。
濱井美和「たたら集落における女性の生活誌にむけて」『古事』5, 2001年.

また、下のYouTubeチャンネルでは、この報告書の研究発表を視聴できる。
「おうちでたたらミュージアム2020」
https://www.youtube.com/channel/UCl7ht4XCjfwbl6A_IJH1D0A

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