田中一江訳、新訳版、ハヤカワ文庫、上下巻、2013年。もともとは、オースン・スコット・カードの1977年発表のデビュー作を、長編化して1985年に発表した彼の出世作とのこと。映画化もされているんだね。

まったく僕の読書傾向には入ってこない海外SFだが、友人の薦めがあったので読んでみた。こういう寄り道も、たまには良いかな? なるほど、最後にどんでん返し的な展開があると。上・下巻はちょっと長いようだが。

ぜんぜん基礎知識のない人間が読んで、まっさきに思い出したのはエヴァンゲリオン。人類の運命を賭けて、まだ幼い子どもが訓練を受けるところ。それから、敵の正体が一向に分からないところで話が進むところ。エヴァンゲリオンでもこの『エンダーのゲーム』でも、そのことが独特の緊張感をもたらす閉塞感を生んでいる。両者でまったくちがうのは、主人公のキャラクターと役割。SFではあっても、この作品には「寄宿舎もの」のテイストがある。エンダーもシンジも孤独に苛まれているが、エンダーはやっぱり超人的なタフガイ。

時代を画した作品は、それがほうぼうに影響を与えるがゆえに、後世になると陳腐にみえることがある。『エンダーのゲーム』の最終盤の展開は、今でこそ珍しくないパターンかもしれないが、これがこの手の物語の源流なのだとすれば、発表当時は相当に新鮮だったろうことは想像できる。エンダーの心象風景が具体化されていた場所の記述など、たしかに今読んでも、強い印象がある。

しかしなんだ。SF、とくに翻訳もののSFって、どれも似たような表紙で内容の良し悪しが判断できないというイメージ、ないし偏見があるけど、この作品に関しても正にという感じで、たんに偏見とは言えなさそうだな。

[J0238/220222]