同人誌、2021年、全80ページ。

はじめに
アンケート結果
第一章 近畿圏中学受験の制度に内在するジェンダー平等
 誰が中学受験をするのか
 近畿圏女子の狭き門
 対談1
第二章 女子中学受験生に対する教育期待の曖昧さ・歪さ
 母親たちの人生 娘たちの人生
 近畿圏中学受験家庭の母親像
 対談2
第三章 中学受験を終えて、その後の歩みとジェンダー不平等への直面
 対談3

関西の中学受験を、女性の当事者目線を基本線にして論じる。世代は、2000年代後半に中学受験をした方々とのこと。対談から少し抜粋。

「「こいつ関西捨てよった!」みたいな感情存在するよな。」「女の子やから東京の大学なんか行かんといてほしいって言われることは今でもまだまだある。私がそうやった。」(32)

実感としては分からないのだけど「〈エリートとして育てるべき〉圧がかかる中学受験でも、母親とスピリチュアルの親和性が高くなるのかもしれないな」(57)なんて発言も。

「ところで親について東京で同じように教育熱心な家庭で育った人と話していると、我々の親ってあまりにジェンダー観が保守的では?と思ってしまうことがある。東京では私たち放課後に愚痴ってたような進路とか家庭の悩みって一世代前に議論され尽くしてて、周回遅れなんじゃないか?!って悲しくなる」(65)。「東京が文化の中心とは言え、関西にしかないものもいっぱいあるし。でもジェンダー観に関しては停滞してて、というか東京だけが加速し続けている感がすごいある」。この辺の話、東京に対する「地方」ってまとめているけど、北海道出身の人間からすれば、近畿は地方じゃまとめらないんだよね。「東京」と「近畿」の方がまだしも精度があるかな。

「老後までを考えた時に、人間同士が結び付いていると社会に認識している手段が最終的に結婚しかないのが非常に・・・・・・厄介じゃない?ひとりで一生自分の食い扶持を稼ぎ続けるの体力的にも精神的にもしんどいし、助け合いは絶対必要やん。その扶助の形が基本的に結婚しか想定されてなくて・・・・・・。単身女性は孤独に陥るやろうなって。まあ女だけじゃないかもしらんけど。」(73)

関西における女性にとっての中学お受験という主題は、「男性/女性」「高学力/低学力」「都市/地方」さらに「東京/近畿」(?)といった軸による分断が関わっていて、さらにそこに「裕福/貧乏」という軸がいろんな形で絡んできている。本書を眺めて改めて思うのは、ジェンダー問題に関しては学校制度・受験制度におけるそれと、実社会におけるそれが切り離しがたく手を組んでいるということ。さらに分けるなら、「家庭」「学校」「職場」とこの三者。中学受験に焦点が絞られていることで、そのことが具体的によく見えてくる良書。

[J0261/220417]