発行・木彫熊通信の同人誌、2022年。汽水空港で購入。

木彫り熊写真
ツキノワ木彫り熊ノートについて
第一章 月の輪を持つ木彫り熊(増子)
第二章 上高山兼太郎の木彫り熊を探して(増子)
第三章 上高山作木彫り熊の行方(増子)
第四章 葛巻生まれの木彫り熊の行き先を尋ねて(是恒)
第五章 北岩手の木彫り熊たち(増子)
第六章 木彫り熊に触れて(是恒・増子)

北海道ではなく、岩手県葛巻で、山仕事のかたわらで木彫り熊を彫った上高山兼太郎(1926~1988)の人と作品を探る。「東北に棲むのはツキノワグマだから、俺はそれを彫るのだ」と、ヒグマではなくツキノワグマをモチーフにしたという。たしかに独特の風貌が印象に残る木彫で、かつて彼の作品を買った人のことば、「売るために作られたような木彫りは嫌いだけど、上高山さんの木彫り熊はそうじゃないように見えた」という言い方がしっくりくる。

それにしても、マッチ箱に刷られた木彫りの熊をみてから、生涯木彫りの熊作りを続けることになった上高山さんの熱意も凄いが、かその作品をここまで探しまわり調べまわる著者おふたりの熱意もふしぎなほどだ。おふたりとも、自ら制作活動をしている人の模様。文章はわりと淡々としている、そのギャップもおもしろい。46年前の古いローカル番組のビデオまでみつかるとか、なかなか奇跡的と思うが。ニッチな話だが、イタコの話題のところでは、石津照爾の「東北の巫俗採訪」が参考文献に挙げられている。葛巻では、異常にかわいい「くまどうさま」はじめ、たくさんの神社や祠に木彫りの神さまが祀られているそうで、上高山さんの仕事にはそういう土壌もあったのかもしれない。

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