副題「多様化する危機を乗り越える」、平凡社新書、2022年。

第1章 「リスクコミュニケーション」とは何か
第2章 人々の意識を変え、行動につなげるには
第3章 社会教育としてのリスクコミュニケーション
第4章 フェイクニュースがもたらすポスト・トゥルースの分断社会
第5章 危機におけるインフォデミック
第6章 陰謀論と民主主義の危機
第7章 民主主義とリスクコミュニケーション

なにか新しい発想が得られるという感じでもないけど、リスクコミュニケーションに関するトピックや基本的な考え方、キーワードを手広く知るためには便利な書。参考文献をみると、著者自身の論文がずらっと並んで、この分野で大いに活躍をしている人であることが分かる。

とくに、陰謀論的な発想の蔓延状況には関心があるのだけど、どの本の説明も隔靴掻痒という感じがある。なるほどというような本がどこかにあるかな。たとえばこの書でも「Qアノンなどのように陰謀論はオカルト信仰やカルト信仰などとも親和性がある」(149)といったくだりがあるのだけど、「よく分からない(とされている)もの」を「よく分からない(とされている)もの」と結びつけて終わってしまうのでは消化不良感が残る。この突っ込みはちょっと、概説であるこの新書に対しては過度な要求だけどもね。

このブログで触れた類書:
中谷内一也『安全。でも、安心できない・・・』(ちくま新書、2008年)
――こちらはより心理学的。

[J0265/220502]