扶桑社新書、2021年。

第1章 緊急事態宣言と東京のタクシー
第2章 壊滅した成田空港タクシー
第3章 群雄割拠、乱世きわめる大阪タクシー
第4章 トヨタ経済圏とタクシー
第5章 ロイヤルリムジン600人一斉解雇騒動のその後
第6章 タクシー配車アプリは業界の救世主か、破壊者か
第7章 年収1000万円、スーパードライバー達の仕事術
第8章 ドライバー経験を基にしたユニークな生き方
第9章 人生を力強く切り開く女性ドライバー達
第10章 新卒ドライバー達の、とらわれのない業界観
第11章 外国人ドライバーは人手不足解消の希望となるか

この本、タイトルに偽りあり、と言いたいかも。ただし、悪い意味ではなく。たしかにコロナ禍で厳しい状況に置かれているタクシー業界の様子にも触れられている。だけれども、後半になるにしたがい、たいへんながらもこの仕事や業界を楽しみがんばっているドライバーさんたちの姿や、そのお話の裏側にうかがわれる暖かいお客さんの存在も伝わってきて、「闇を暴く」というよりも、スタッズ・ターケル『仕事!』に近い感じで、このへんはきっとライターさんの人柄なんだろう。露悪的に闇ばかり描くのとはちがったリアリティがある。

タクシー業界、ひいては個人相手の運搬業というのは、国それぞれや時代の事情を如実にあらわしておもしろい主題。日本だったら、Uberが(少なくともここまでの第一波のところで)入りこめなかったかという問題にはずっと関心を持っている。次のブログ記事は、なるほどと感じた説明のひとつで、海外ではふつうタクシー業界ってもっとインフォーマル・セクターっぽいのだよね。といって、これもイギリスのケースには当てはまらないが・・・・・・。

>KEN NISHIMUAR、「なぜUber配車サービスは日本で失敗したのか」、Coral.

[J0270/220605]