講談社学術文庫、1978年。1952年に刊行された『星と伝説』が定本で、今は中公文庫で入手できる模様。

序文(新村出)
はしがき
北極星を語る
浪速の名船頭
北斗七星
寿命星
三つ星覚書
下田の三ドル星
天狼を射る
ナイルの星シリウス
聖エルモの火
南極老人星を見る
房州の布良星
獅子座の「大鎌」
織女三星
アイヌの星と伝説
蝎座の赤星
星の追いかけ伝説
バビロニヤの蝎人
南斗と北斗
「偽りの東明」
銀河物語
「女王の椅子」
スバル星東西
見上げ皺・頭巾落し
星と天気占い
ヒヤデス星団
白昼の星
宇治拾遺の星
蒙古の星
ポリネシヤの星
星の音楽
解説(広瀬秀雄)

日本には星にまつわる民俗や伝承が少ないと言われる中で、野尻抱影が遺した仕事の意味は大きい。この書は、日本のことのみならず、世界における星の伝承も扱って、それがまた味わい深い。

そもそも星は、動きもするし、地図のように平面にプロットするのが難しい。星の民俗が拾いにくい・記録されがたい理由はそうした性質にもあるだろう。一方で、星ほどどの社会・どの時代にも普遍的なものはないわけで、人間の認識にとって非常に独特な位置を占めるものなのだなと、カントの言葉なども思い出しなから考える。

[J0276/220626]