朝日新書、2021年。1997年に刊行された本の再出版。解説・校訂清水克行。

1 村の戦争
 戦場の荘園の日々―和泉国日根荘
 村人たちの戦場
 戦場の商人たち
2 村の平和
 荘園の四季
 村からみた領主
 村の入札
3 中世都市鎌倉
 鎌倉の祇園会と町衆

「1 村の戦争」では、領主や大名とたくましくやりとりをする村人たちの様子を描く。その記述でこの本は有名だとおもうが、より感銘を受けたのは「2 村の平和」。中世の年中行事を資料から復元して、近代のそれとも比較する。ひとことに「伝統的な年中行事」とは言うけれど、散発的にではなく、実際にこのように中世にその様子を辿る仕事ってなかなかないのでは。近世まではそこそこありそうだけども。柳田國男が泣いて喜ぶよ。「3 中世都市鎌倉」では、中世後期に鎌倉は「散村」になったという見方に抗して、生活・文化の歴史的連続性を辿っていく。

いくつかメモ。

「かけこみ寺」「公界」としての寺社も、戦国の終わりになると大名たちに治外法権の立場を奪われるようになるらしい。同時に、大名の城が民衆の避難所としての役割を強めていくという。(97-98)

中世の人びとは、「天下の将軍にも、荘園の領主にも、それぞれ固有の職責があるとみて、イザという時、その遂行を強く求めていた」(174)。16世紀はじめ、和泉国日根荘、正月に行われていた「吉書始め」(145)。それは「領主と村の百姓たちにとって、年のはじめに、領主が勧農を、百姓が年貢を守るという誓いを新たにする大切な場であった」(145)。あるいは、領主の代替わりの際につくったという、起請文(182)。こうした役の体系に近いような観念が、中世の遅くない時期にはすでにあったと。ふむ。

[J0292/220908]