副題「現代に生きる民俗信仰」、角川ソフィア文庫、2018年、原著は2001年。

  • はじめに
  • 改訂増補にさいして
  • 第一章 カクレキリシタンとは何か
    1 カクレキリシタン研究の足跡
    2 「潜伏キリシタン」と「カクレキリシタン」
    3 「隠れキリシタン」か「カクレキリシタン」か
    4 カクレキリシタンに対するイメージの転換
    5 潜伏時代とキリシタン崩れ
    6 キリシタンの復活とカクレキリシタンの出現 
  • 第二章 カクレキリシタンの分布
    1 潜伏キリシタンの分布 
    2 現在のカクレキリシタンの分布 
  • 第三章 生月島のカクレキリシタン
    1 生月キリシタンの歴史
    2 生月のカクレキリシタン組織
    3 生月のオラショオラショの意義
    4 生月のカクレキリシタン行事
    5 生月カクレキリシタンの神観念
  • 第四章 平戸島のカクレキリシタン
    1 平戸キリシタンの歴史
    2 平戸カクレキリシタンの分布
    3 根獅子のカクレキリシタン
    4 飯良のカクレキリシタン
    5 草積のカクレキリシタン
    6 下中野のカクレキリシタン
    7 春日のカクレキリシタン
    8 獅子のカクレキリシタン
    9 油水・中の原・大久保・中の崎のカクレキリシタン
    10 霊山安満岳
  • 第五章 五島のカクレキリシタン
    1 外海潜伏キリシタンの五島移住
    2 若松町築地・横瀬のカクレキリシタン
    3 若松島有福のカクレキリシタン
    4 奈留島のカクレキリシタン
    5 福江島宮原のカクレキリシタン
    6 福江島のその他のカクレキリシタン
  • 第六章 長崎のカクレキリシタン
    1 家野町のカクレキリシタン
    2 岳路のカクレキリシタン
  • 第七章 外海のカクレキリシタン
    1 外海キリシタンの歴史
    2 出津のカクレキリシタン
    3 黒崎のカクレキリシタン
  • 第八章 カクレキリシタンの解散とその未来
    1 なぜカトリックに戻らないのか
    2 消えゆくカクレキリシタン
    3 カクレキリシタンにおける解散の意味
    4 解散後の神様の取り扱い
  • おわりに

地道な調査にもとづいた、一級の記録、一級の研究書。地区ごとのバラエティを描いて詳細なだけに、安易な一般化ができないことが分かってくる。また、現代における衰退の様子をたどっているところにも特徴がある。

「ラテン語の訛ったオラショや、洗礼、クリスマス、復活祭などに比定できる行事を伝えているというようなことによって、いまもってカクレキリシタンはキリスト教徒であるとみなしてはならない。仏教や神道、さまざまな民間信仰と完全に融合し、まったく別のカクレキリシタンというひとつの民俗宗教に変容している」(395)。

キリスト教との関係もさまざまで、各地のカクレキリシタンの多くは消滅しつつあるが、神道に収まる(一元化するというべきか)者もあれば、カトリックに向かう者もあり、黒崎のように、熱心な先導者によってカトリック化した地域もあるという。

神道に近いという者もあれば、「やっていることは仏教のことである」(389)という証言もある。仏教とはほとんど区別していないような地域もあれば、「経消し」といって仏教式の葬式の効果を帳消しにする儀礼をしてきた生月島の地域もある(187-)。ただし、基本線として、先祖代々の信仰として大事と認識されてきており、また、伝統的なやり方を守らないことによる「祟り」への恐れも幅広く存在してきたようだ。一言で言えば、カトリック的な要素について特異であったとしても、たしかにきわめて「日本的」な信仰なのだ。

[J0303/221008]